The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

一般演題(口演発表) » [一般口演6] 加齢変化・基礎研究2

一般口演6 加齢変化・基礎研究2

Sat. Jun 11, 2022 4:50 PM - 5:40 PM 第3会場 (りゅーとぴあ 2F スタジオA)

座長:梅本 丈二(福岡大学病院摂食嚥下センター)

[O6-04] 固形食品摂取時の食塊形成過程における舌骨上筋群の機能的役割の検討

○笹 杏奈、真柄 仁、辻村 恭憲、井上 誠 (新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
 表面筋電図と顎運動軌跡を同時記録し、咀嚼時の食塊形成過程を評価する手法を検討した。
【方法】
 20名の健常成人(女性8名、平均年齢31.0歳)を対象とした。実験1では、最大開口時、最大舌圧ならびにその25から100%の舌圧発揮時の舌骨上筋群筋活動を記録した。実験2では、両側咬筋・舌骨上筋群の表面筋電図、嚥下内視鏡画像、三次元動作解析装置による顎運動軌跡を同時記録し、物性の異なる2種類の米菓およびピーナッツを自由摂取または片側咀嚼にて摂取した。筋電図波形は全波整流後、その積分値を活動量として解析に用いた。
【結果と考察】
 実験1:舌圧増加に伴い舌骨上筋群活動は有意に上昇し、最大舌圧発揮時には最大開口時に近い筋活動量が得られたことで、舌運動には舌骨上筋群活動が関わることが示唆された。実験2:咀嚼時間や咀嚼回数は食品の硬さに依存して増加し、自由摂取に比べ片側咀嚼での摂取で増加した。片側咀嚼時、1咀嚼サイクルあたりの咬筋活動量は非咀嚼側に比べ咀嚼側で有意に高かったが、舌骨上筋群は両者に違いを認めなかった。また、咀嚼開始から初回嚥下までの咀嚼回数をもとに咀嚼前期、後期に分け、舌骨上筋群活動と開口量の相関をみると、咀嚼側と非咀嚼側ともに咀嚼前期で有意な正の相関を示し、この区間は舌骨上筋群が主として開口に働くことが示唆された。両者の値を用いて、被験者毎に回帰直線と95%信頼区間を求め、咀嚼時間内に舌骨上筋群が開口優位に働いたサイクル(Jaw-opening dominant cycle)、食塊形成優位に働いたサイクル(Deviation dominant cycle, DC)を定義した。DCの出現割合は米菓HHで有意に高かった。さらに舌骨上筋群活動量/開口量は米菓HHにて咀嚼後期に有意な上昇を示し、その増加割合は咀嚼側で高かった。食塊形成過程における舌骨上筋群の寄与が食品間で異なること、食塊形成が困難な食品においては咀嚼側での舌骨上筋群活動量が有意に高いことが示唆された。
【謝辞】
 実験に協力頂いた新潟大学大学院自然科学研究科情報電子工学 林豊彦教授、渡邉嶺王氏に感謝の意を表する。
(COI開示:なし)
(新潟大学倫理審査委員会承認番号 2020-0039)