一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表1 介護・介護予防

[P1-03] 口腔機能低下有訴者の特徴および運動実践と抑うつとの関連

○西村 生 (筑波大学大学院人間総合科学学術院人間総合科学研究群体育学学位プログラム)

【目的】
口腔機能低下は食事量の減少や意欲低下を引き起こし,抑うつのリスク因子となる。口腔機能低下を抑制する研究は散見されるが口腔機能低下者に着目し,運動の観点から抑うつの予防に効果的な方策を検討した研究は皆無である。そこで本研究では口腔機能低下者の特徴を明らかにしたうえで,運動頻度と抑うつの関連について横断的に検討をおこなう。
【方法】
2019年に茨城県笠間市に在住する高齢者のうち,要介護認定を受けていない7,954名を抽出し自記式質問紙により郵送調査を実施した。3,934名から回答があり、データ欠損者1,164名と認知症既往がある13名を除く2,756名を対象とした。基本チェックリストの口腔機能評価指標により,口腔機能低下者とそうでない者の基本属性,運動頻度および社会交流量を比較した。また,口腔機能低下者の運動頻度と抑うつとの検討には,口腔機能低下者783名から,データ欠損者250名と認知症既往がある13名を除く520名を対象とした。「一人でおこなう運動」および「他者とおこなう運動」の頻度を調査し,2つの運動頻度を合計しカテゴリ化した(「非実践」、「週1~ 2回」「週3回以上」)。統計解析は二項ロジスティク回帰分析を用い,目的変数に抑うつ,説明変数に運動頻度を投入し,基本属性および社会交流量を調整した。統計的有意水準は5%とした。
【結果と考察】
有効な回答者2,756名の平均年齢は72.5±5.2歳であり,18.9%に口腔機能低下がみられた。口腔機能低下者とそうでない者を比較したところ,口腔機能低下者は高齢で,抑うつ傾向および認知機能の低下の割合が有意に高かった。
口腔機能低下者における運動頻度と抑うつとの関連性の検討では,運動非実践群をレファレンスとした際に週3回以上群で抑うつの発生が有意に低値を示した(OR = 0.55, 95% CI: 0.36–0.83)。一方,週1~2回群では有意な関連は認められなかった。本研究の結果,口腔機能低下者は抑うつ傾向を有する割合が高いため,抑うつ改善の対策を早急に講じるべきであることが明らかとなった。また,口腔機能低下者において週3回以上運動している者は,抑うつ発生が低かったため今後は縦断研究や介入研究をおこない,よりエビデンスレベルの高い検討が必要である。

(COI開示:なし)
(筑波大学体育系倫理審査委員会承認番号 体019–101)