一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表2 口腔機能

[P2-05] 不安定な座位姿勢の保持と口腔の運動が咀嚼運動に及ぼす影響 ―健常者における検討―

○森下 元賀1、西川 弘太郎2 (1. 吉備国際大学保健医療福祉学部理学療法学科、2. 津山工業高等専門学校総合理工学科機械システム系)

【目的】
 高齢者において、特に脳卒中患者では側方への姿勢保持が不安定となり、左右非対称な座位姿勢を取ることが多い。不安定な座位姿勢では頭部の保持のために口腔周囲筋が使用されることが報告されており、食事動作において口腔周囲筋の疲労を速めて咀嚼、嚥下機能に影響を与えることが予想される。そこで、不安定な座位姿勢でさらに口腔の運動を行うことによる咀嚼能力、口腔周囲筋の筋活動を健常者において検証し、高齢者への姿勢介入の必要性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 口腔、嚥下機能に問題のない健常者10名(平均年齢21.7±0.5歳)を対象とした。対象者には座位姿勢を取らせ、 咬筋と舌骨上筋群に筋電図電極を貼付した。測定は座位を取り始めた直後、5分後、10分後にグルコセンサー (ジーシー社製)のグミ(グルコラム)を咀嚼させ、その時の筋電図を測定した。測定は、足底非接地の端座位(通常座位)、習慣的咀嚼側に30度傾斜させた座位(傾斜座位)で行い、さらにそれぞれの姿勢で安静にする条件と座位保持中に棒付き飴の形状の樹脂を舐め続ける条件をそれぞれ行う合計4条件を異なる日に測定した。解析項目はグルコセンサーによる咀嚼能力、筋電図による咀嚼サイクル、1回の咀嚼当たりの咬筋活動量、咬筋活動時間、舌骨上筋群活動量、およびグルコラム咀嚼中のそれぞれの変動係数(標準偏差/平均値)とした。統計学的解析は反復測定一元配置分散分析で時間による変化と条件間での比較を行った。(吉備国際大学倫理審査委員会、承認番号20-38)
【結果と考察】
 樹脂を舐める条件では通常座位、傾斜座位の両方で時間とともに咀嚼サイクル、咬筋活動量、舌骨上筋群活動量のそれぞれの変動係数が増加した(p<0.05)。しかし、条件間での増加の程度に有意差はなかった。舌骨上筋群活動量は樹脂をなめる傾斜座位のみで時間とともに減少した(p<0.05)。咀嚼能力、咬筋活動時間および変動係数は各条件間でも時間経過でも有意差はなかった。このことから口腔の運動を行うことは咀嚼リズムを変化させることが示された。また、姿勢保持に身体的努力を要する座位姿勢は、口腔の運動によって咀嚼時の舌骨上筋群の活動性を低下させやすく、舌による移送や嚥下機能に影響を与える可能性が示された。
(COI開示:なし)