[P2-08] 通所介護サービス利用者における低栄養リスクに関連する要因の検討
【目的】
高齢期における口腔機能低下が栄養状態に影響をもたらすと考えられているが、その報告は地域在住高齢者や入院患者を対象としたものが多い。本研究は通所サービスを利用する要介護高齢者における栄養状態に関連する口腔機能の要因を探索することを目的とした。
【方法】
北海道、秋田県、東京都、福岡県内の6か所の通所介護事業所を利用する要介護高齢者269名(男性53名、女性216名、平均年齢83.8±13.0歳)を対象とした。栄養状態の評価には、Mini Nutritional Assessment-Short Form(以下、MNA®-SF)を用い、合計点数12点以上を栄養状態良好群、11点以下を低栄養リスク群とした。口腔機能は、現在歯数に補綴歯数を加えた機能歯数、咬合力(デンタルプレスケールⅡ)、舌圧(JMS舌圧測定器)、舌運動巧緻性(オーラルディアドコキネシスta音)、改訂水飲みテスト (3点以下で嚥下障害リスクあり) で評価した。栄養状態良好群と低栄養リスク群の差異について、連続変数についてはMann–Whitney U検定、カテゴリ変数についてはカイ二乗検定を用いて検定を行い、多変量解析として二項ロジスティック回帰分析を用いて、低栄養リスクに関連する口腔機能の要因を探索した。
【結果と考察】
対象者全体のMNA®-SFの平均値は11.6±1.9点であり、低栄養リスク群は43.1%であった。2群間の比較では、 低栄養リスク群の舌圧の中央値は22.8kPaであり、栄養状態良好群の中央値27.9kPaと比較して有意に低かった。 嚥下障害リスクのある者の割合は、低栄養リスク群では13.9%であり、栄養状態良好群の6.1%と比較して有意に高かった。年齢および性別で調整した多変量解析の結果では、舌圧が低栄養リスクに有意に関連する要因として抽出された(舌圧1kPa増加毎の低栄養リスクのオッズ比0.95、95%信頼区間0.92-0.98)。本研究の結果、通所サービスを利用者の約4割に低栄養リスクを認め、口腔機能では舌圧の低下が関連していた。通所サービス利用の要介護高齢者においては舌圧の維持が低栄養リスクの低減につながる可能性が示された。今後、舌圧の改善が栄養状態にもたらす効果を検証していく必要がある。
(COI開示:なし)
東京都健康長寿医療センター研究部門倫理審査委員会承認番号(R2-迅8)
高齢期における口腔機能低下が栄養状態に影響をもたらすと考えられているが、その報告は地域在住高齢者や入院患者を対象としたものが多い。本研究は通所サービスを利用する要介護高齢者における栄養状態に関連する口腔機能の要因を探索することを目的とした。
【方法】
北海道、秋田県、東京都、福岡県内の6か所の通所介護事業所を利用する要介護高齢者269名(男性53名、女性216名、平均年齢83.8±13.0歳)を対象とした。栄養状態の評価には、Mini Nutritional Assessment-Short Form(以下、MNA®-SF)を用い、合計点数12点以上を栄養状態良好群、11点以下を低栄養リスク群とした。口腔機能は、現在歯数に補綴歯数を加えた機能歯数、咬合力(デンタルプレスケールⅡ)、舌圧(JMS舌圧測定器)、舌運動巧緻性(オーラルディアドコキネシスta音)、改訂水飲みテスト (3点以下で嚥下障害リスクあり) で評価した。栄養状態良好群と低栄養リスク群の差異について、連続変数についてはMann–Whitney U検定、カテゴリ変数についてはカイ二乗検定を用いて検定を行い、多変量解析として二項ロジスティック回帰分析を用いて、低栄養リスクに関連する口腔機能の要因を探索した。
【結果と考察】
対象者全体のMNA®-SFの平均値は11.6±1.9点であり、低栄養リスク群は43.1%であった。2群間の比較では、 低栄養リスク群の舌圧の中央値は22.8kPaであり、栄養状態良好群の中央値27.9kPaと比較して有意に低かった。 嚥下障害リスクのある者の割合は、低栄養リスク群では13.9%であり、栄養状態良好群の6.1%と比較して有意に高かった。年齢および性別で調整した多変量解析の結果では、舌圧が低栄養リスクに有意に関連する要因として抽出された(舌圧1kPa増加毎の低栄養リスクのオッズ比0.95、95%信頼区間0.92-0.98)。本研究の結果、通所サービスを利用者の約4割に低栄養リスクを認め、口腔機能では舌圧の低下が関連していた。通所サービス利用の要介護高齢者においては舌圧の維持が低栄養リスクの低減につながる可能性が示された。今後、舌圧の改善が栄養状態にもたらす効果を検証していく必要がある。
(COI開示:なし)
東京都健康長寿医療センター研究部門倫理審査委員会承認番号(R2-迅8)