一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表2 口腔機能

[P2-10] 脳卒中回復期における摂食嚥下障害のリスク因子となる口腔機能障害

○関本 愉1,2、坂井  鮎3,4、松尾 浩一郎5 (1. 医療法人宝生会 PL病院 歯科、2. 藤田医科大学医学部 歯科・口腔外科学講座、3. 藤田医科大学病院 歯科・口腔外科、4. 新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔生命福祉学専攻、5. 東京医科歯科大学大学院 地域・福祉口腔機能管理学分野)

【目的】
 口腔機能低下症では食べる機能を直接障害することはほとんどない.しかし,口腔機能が明らかに障害されると食べる機能に問題を引き起こす可能性がある.そこで,われわれは口腔機能障害が摂食嚥下障害のリスク因子となるか脳卒中回復期の患者を対象に横断的に検討した.
【方法】
 回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者のうち研究に同意を得られた者を対象とした.回復期病棟入棟から平均6日後に,口腔機能低下症の測定に準じて7項目の口腔機能を測定し,摂食レベルをFunctional Oral Intake Scale(FOIS)で評価した.FOISスコアが1-5の対象者を摂食嚥下障害あり群,FOISスコアが6-7の対象者を摂食嚥下障害なし群とした.摂食嚥下障害の有無を目的変数として,口腔機能低下症の各項目に対してROC曲線を描きAUCを求め,感度と特異度を算出した.
【結果と考察】
 対象は328名(平均年齢69.0±13.3歳,男性63.4%),摂食嚥下障害あり群は175名(53.4%)であった.AUCはすべての口腔機能検査において有意であったが,咀嚼機能検査は窒息のリスクを考慮し,対象者の半数以下でしか実施できなかった.口腔不潔と口腔乾燥はAUCが0.6を下回っていた.その他4項目では,舌圧は0.796, 舌口唇運動機能は0.736,咬合圧は0.669,EAT10は0.659であった.舌圧ではカットオフ値を24kPaとしたとき, 感度0.76,特異度0.71となった.舌口唇運動機能ではカットオフ値を5.0回/秒としたとき感度0.78,特異度0.62, 咬合力ではカットオフ値を450Nにしたとき感度0.65,特異度0.64であった.
 口腔機能低下症の指標である口腔機能検査と摂食嚥下障害との間には有意な関係が認められた.このうち,嚥下障害の指標となっているEAT10を除いた場合には,舌圧,舌口唇運動機能,咬合力が摂食嚥下障害とより強い関連性を示していた.これらの項目のカットオフ値を用いることで,口腔機能低下症の下のレベルである口腔機能障害の指標として活用できることが示唆された.

COI開示:なし
藤田医科大学 倫理審査委員会承認番号 HM18-026