一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表3 連携医療・地域医療

[P3-02] 地域要介護高齢者歯科診療所における超高齢患者の検討

○間宮 秀樹、堀本 進、秋本 覚、小林 利也、和田 光利、片山 正昭 (藤沢市歯科医師会)

【目的】
藤沢市の高齢化率は経年的に増加しており、90歳以上の超高齢者の歯科受診機会も増えていると考えられる。今回、我々は、藤沢市歯科医師会要介護高齢者診療部門における超高齢者に対する診療実態を調査して検討した。 本診療所では全例、歯科麻酔科医によるモニタリングを行っている。
【方法】
2021年1月から12月までの1年間に受診した初診患者のうち90歳以上の超高齢者について、介護度、認知症の有無、基礎疾患、残存歯数、当該期間中の治療内容、回数、治療時間、初診時収縮期圧、偶発症について診療記録と麻酔記録をもとに調査した。対照群は75歳から89歳までの高齢者とした。結果はMann-Whitney U testおよびχ二乗検定で統計処理を行い、危険率5%未満を有意差ありとした。
【結果と考察】
全初診患者39名のうち、超高齢者(以下、超高齢群)は91歳から101歳で、11名57症例であった。対照群は24名117症例で、74歳以下は4人であった。介護度は超高齢群では介護度1と2が多く、対照群では介護なしと介護1が多かったが、割合に差はなかった。認知症の有無の割合にも両群に差はなかった。基礎疾患は両群とも高血圧症等の循環器疾患が最も多かった。残存歯数は超高齢群で平均14.7本、対照群17.7本で、両群に差はなかった。治療内容は超高齢群では義歯調整、歯冠修復が多く、対照群では義歯調整、クリーニングと続いた。超高齢群で抜歯が2例で行われていた。治療回数は超高齢群で平均4.5回、対照群で平均5.8回で差はなかったが、 治療時間は61.3分に対し、78.3分で差がみられた。初診時収縮期圧は超高齢群の平均135.5mmHgに対して対照群152.8mmHgで差はなく、両群とも術中偶発症はなかった。
加齢により臓器機能は低下するため、超高齢者では歯科治療のストレスにより全身的偶発症発生リスクは高まると考えられるが、今回、偶発症の発生はなかった。超高齢者でも一般高齢者と同様の治療が安全に行えた理由として、モニタリングによるバイタルサインの監視、治療時間短縮の可能性が考えられた。超高齢者の歯科治療では付添者が積極的な治療を望まない場合もあるが、患者のQOLの向上のためには、安全管理を徹底した上で必要な歯科治療を提供するべきと考える。
(COI開示:なし)
(藤沢市歯科医師会倫理委員会承認番号2021-005)