ポスター発表4 実態調査

[P4-05] レセプトデータを用いた抜歯後出血の分析 -LIFE Study-

○中村 純也^1,2、芝辻 豪士¹、髙橋 潤平¹、西尾 英莉¹、足立 了平¹、福田 治久³ (1. 医療法人社団関田会　ときわ病院　歯科口腔外科、2. 神戸大学大学院保健学研究科　パブリックヘルス領域、3. 九州大学大学院医学研究院　医療経営・管理学講座)

【目的】
日本老年歯科医学会などにより「抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン」が出版されてから10年以上が経過した。その間抜歯後出血に関する研究は多数行われてきたが，どれも小規模であり発生頻度にもばらつきがあった。また先行研究の中で年齢や併存疾患は全般的な出血においてはリスク因子に含まれているが，抜歯後出血においてそれらがリスク因子になるかを調査した報告はこれまでにない。本研究の目的は大規模データベースを用いて各抗血栓療法別の抜歯後出血頻度を調査し，さらに年齢や併存疾患などが抜歯後出血のリスク因子となるかを検討することである。
【方法】
国民健康保険・後期高齢者医療制度加入者の請求データからなる大規模多地域コホート研究（LIFE Study）内で2014年4月～2019年3月に抜歯された患者107767名を解析対象とした。抗血栓療法は医薬品コードから判別（0なし1抗血小板薬単剤2抗血小板薬複数3DOAC4ワルファリン5抗血小板薬・抗凝固薬併用に群分け）し，アウトカムは抜歯同月の傷病名「抜歯後出血」の有無とした。併存疾患は先行研究から高血圧症，肝機能障害，腎機能障害，脳血管障害，血液凝固障害有無を調査した。各抗血栓療法の抜歯後出血頻度の比較にχ2検定を行い、抜歯後出血のリスク因子を検討するために，目的変数を抜歯後出血の有無，説明変数を年齢，性別，CCI，各併存疾患有無，各抗血栓療法有無，抜歯部位とした多重ロジスティック回帰分析を行った。最後に高齢患者における抜歯後出血の検討を行うため65歳以上と65歳未満によるサブグループ解析を行った。
【結果と考察】
抗血栓療法は14343名（13.3％）に，抜歯後出血は419名（0.39％）に認めた。抜歯後出血リスクは，抗血栓療法なし群はその他各群より有意に低く，抗血小板薬単剤群はその他各群より有意に低い結果であった。多重ロジスティック回帰分析の結果，年齢，抗血小板薬内服，DOAC内服，ワルファリン内服，血液凝固障害，抜歯部位に抜歯後出血と有意な関連を認めた。また抗血小板薬内服，DOAC内服は年齢によるサブグループ間で結果が異なっていた。加齢は抜歯後出血のリスク因子であり，抗血栓療法の種類や抜歯部位と合わせて総合的に評価検討する必要があると考えられた。
（COI開示：なし）
（九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会承認2021-399）