The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表)

一般演題(ポスター発表) » [ポスター発表4] 実態調査

ポスター発表4 実態調査

[P4-10] 超高齢者における残存歯数・低栄養と3年後生存率の関連性

○西尾 健介1,2、柳澤 直毅1,2、高橋 佑和1,2、岡田 真治1,2、深澤 麻衣1,2、浦田 健太郎1,2、李 淳1,2、伊藤 智加1,2、高津 匡樹1,2、飯沼 利光1,2 (1. 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座、2. 日本大学歯学部付属歯科病院 総義歯補綴科)

【目的】
 高齢者の残存歯数は,生命予後に影響を及ぼすとの調査結果が数多く報告されている。 その報告の多くは70歳以上の高齢者を被験者としているが,平均寿命が延伸している現在では,超高齢者へのエビデンスの確立が望まれる。そこで我々は,長寿社会における高齢者の暮らし方に関する学術調査 (TOOTH研究) の結果を基に,85歳以上の超高齢者における残存歯数と生命予後の関連性を検討した。さらに, 生命予後に影響を与える重要な要因として, 残存歯数が低栄養の発症に影響を及ぼすとの仮説を立て, 低栄養の発症と生命予後の関連性を検討した。
【方法】
 被験者は,2008年3月から2009年11月の間に,住民台帳より無作為に抽出され,研究に同意を得た513名の超高齢者(85歳以上,新宿区渋谷区港区在住)とした。被験者は,残存歯数の違いで4カテゴリー (0, 1–8, 9-18, 19歯以上)に分類し,カテゴリー間の3年後生存率の違いを,ログランク検定にて解析した。低栄養の評価は,Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM) criteriaを用い,同様に低栄養発症の有無による3年後生存率の違いを解析した。3年後生存率に関連性が認められた分析項目については,さらにCox回帰分析を用いて,関連する交絡因子による影響を考慮し,ハザード比(Hazard Ratio : HR)を解析した。
【結果と考察】
 3年後生存率は,残存歯数の違いによる全てのカテゴリー間で有意な差を認めなかった(p=0.638)。一方, 低栄養発症有無は有意な差を認めた(p<0.001)。しかし残存歯数の違いと低栄養の発症率に有意な差は認めなかった(p=0.159)。
低栄養の発症と3年後生存率は,各種交絡因子を調整した後でも,高いHRを示し(HR:2.315, 95% CI:1.431-3.746),さらに,残存歯数の影響を調整してもHRは依然として有意なままであった(HR: 2.365, 95% CI: 1.449-3.853)。本結果より,超高齢者においては,残存歯数は,低栄養の発症に直接影響を与えない可能性が明らかとなり,残存歯数が少ない高齢者であっても,栄養状態が維持できていれば、寿命の短縮は防げる可能性が示された。
(COI 開示:なし) (日本大学歯学部 倫理委員会承認番号 2003-20)