[P5-01] 強制的な血管新生抑制が抜歯窩硬軟組織治癒に与える影響の検索
【目的】
高齢者の悪性腫瘍罹患率は高く,治療には化学療法,ビスホスホネート(BP)製剤,血管新生抑制薬(ベバシズマブ)などが使用されるが,BP製剤やベバシズマブ使用患者で薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)の発症が報告されている.本研究は,ベバシズマブおよび/またはBP製剤が抜歯窩硬軟組織治癒に与える影響を検索することを目的とした.
【方法】
雌性C57BL/6Jマウスに,BP製剤(Zol),マウス用ベバシズマブである抗VEGFA中和抗体(mAb-V),ZolとmAb-Vの併用(Zol/mAb-V),生理食塩水(対照群:VC)のいずれかを5週間投与し,投与3週間後に両側上顎第一大臼歯を抜歯し,その2週間後に屠殺した(n=5/各群).屠殺時に上顎,脛骨,ならびに血清を採取し,マイクロCT撮像,各種組織染色と免疫染色(血管とマクロファージの分布),血清を用いた酵素結合免疫吸着測定により,詳細な解析を行った.
【結果と考察】
TRAcP5bの血清解析,マイクロCTによる3次元的骨構造解析,CD31に対する特異抗体を用いた免疫組織化学的解析を行い,Zolでは脛骨の骨量が有意に増大すること,また,Zol/mAb-Vでは破骨細胞活性が最も抑制され, 舌結合組織の血管分布が有意に抑制することが分かった.以上より,本研究で使用したZolとmAbは臨床と同等の薬剤効果を示すことが確認された.一方,肉眼的所見では,いずれの群も創部開放は認められず,抜歯部位は治癒しているようにみえたが,組織病理学的には全く異なっていた.すなわち,Zol,mAb-V,Zol/mAb-VではVCと比較して有意に壊死骨と空の骨小腔数が増大し,抜歯部結合組織ではコラーゲンの産生低下,血管とマクロファージの有意な分布抑制に加え,上皮の蹄脚長さと顆粒層厚さの減少が起こり,骨性治癒遅延と軟組織治癒異常が惹起されていた.以上から,ZolまたはmAb-Vの投与は,創部開放を伴わないMRONJステージ0様病変に類似し,ZolとmAb-Vを併用投与すると治癒阻害作用が最も強かった.高齢者がベバシズマブとBP製剤の併用療法を受けている場合には,MRONJに十分留意して歯科治療を行うべきであると考えられた.
(COI開示:なし)
(長崎大学倫理委員会承認番号1708241404-5)
高齢者の悪性腫瘍罹患率は高く,治療には化学療法,ビスホスホネート(BP)製剤,血管新生抑制薬(ベバシズマブ)などが使用されるが,BP製剤やベバシズマブ使用患者で薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)の発症が報告されている.本研究は,ベバシズマブおよび/またはBP製剤が抜歯窩硬軟組織治癒に与える影響を検索することを目的とした.
【方法】
雌性C57BL/6Jマウスに,BP製剤(Zol),マウス用ベバシズマブである抗VEGFA中和抗体(mAb-V),ZolとmAb-Vの併用(Zol/mAb-V),生理食塩水(対照群:VC)のいずれかを5週間投与し,投与3週間後に両側上顎第一大臼歯を抜歯し,その2週間後に屠殺した(n=5/各群).屠殺時に上顎,脛骨,ならびに血清を採取し,マイクロCT撮像,各種組織染色と免疫染色(血管とマクロファージの分布),血清を用いた酵素結合免疫吸着測定により,詳細な解析を行った.
【結果と考察】
TRAcP5bの血清解析,マイクロCTによる3次元的骨構造解析,CD31に対する特異抗体を用いた免疫組織化学的解析を行い,Zolでは脛骨の骨量が有意に増大すること,また,Zol/mAb-Vでは破骨細胞活性が最も抑制され, 舌結合組織の血管分布が有意に抑制することが分かった.以上より,本研究で使用したZolとmAbは臨床と同等の薬剤効果を示すことが確認された.一方,肉眼的所見では,いずれの群も創部開放は認められず,抜歯部位は治癒しているようにみえたが,組織病理学的には全く異なっていた.すなわち,Zol,mAb-V,Zol/mAb-VではVCと比較して有意に壊死骨と空の骨小腔数が増大し,抜歯部結合組織ではコラーゲンの産生低下,血管とマクロファージの有意な分布抑制に加え,上皮の蹄脚長さと顆粒層厚さの減少が起こり,骨性治癒遅延と軟組織治癒異常が惹起されていた.以上から,ZolまたはmAb-Vの投与は,創部開放を伴わないMRONJステージ0様病変に類似し,ZolとmAb-Vを併用投与すると治癒阻害作用が最も強かった.高齢者がベバシズマブとBP製剤の併用療法を受けている場合には,MRONJに十分留意して歯科治療を行うべきであると考えられた.
(COI開示:なし)
(長崎大学倫理委員会承認番号1708241404-5)