一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表5 加齢変化・基礎研究

[P5-05] 高齢マウスに対する老化細胞除去薬の効果

○小山 尚人1,2、加藤 慎也1、田井 康寛1,2、中村 卓2、出分 菜々衣2、尾﨑 友輝2、吉成 伸夫1,2 (1. 松本歯科大学大学院歯学独立研究科健康増進口腔科学講座、2. 松本歯科大学歯科保存学講座(歯周))

【目的】
 老化の原因として老化細胞の存在が報告されている。老化細胞は細胞老化随伴分泌現象(senescence-associ ated secretary phenotype: SASP)を起こす。SASP因子は,創傷治癒などの生体の恒常性維持において重要な役割を担うことが知られている。しかしその一方で慢性炎症を誘導し,各臓器の老化が起こるが,歯周病や動脈硬化症も老化が共通の交絡因子として存在する。老化による慢性炎症の誘導と拡大を制御することが可能であれば, 慢性炎症を基盤とする両疾患に対し,一括して標的とする治療法開発に繋がる。そこで両疾患の関連性と創薬の可能性を詳細に研究するモデル作成ために,老齢マウスを用い,老化細胞除去薬投与による歯周組織と動脈硬化への老化制御の効果を検討した。
【方法】
 69週齢のC57BL6マウス25匹と遺伝的高脂血症モデルである89週齢のApoE-/-マウス8匹を実験に供した。老化細胞除去薬としてダサチニブ®とケルセチン®溶液を2週間ごと2.5ヶ月間投与した後,動物を安楽死させ歯周組織と大動脈を摘出し,歯周組織はµ-CT撮影を行い,三次元再構築画像を用いて,下顎骨の臼歯を計測部位とし,歯槽骨吸収の程度を検討した。また上顎骨の凍結切片を作成しβ‐Gal染色を施行した。大動脈は,en face処置により血管内面を可視化し,ズダンⅣ染色により血管内皮の脂肪沈着を染色した。その後,染色部位面積と血管全体の面積を求め脂肪沈着率を計測した。
なお,本研究は松本歯科大学動物実験委員会の承認(No.344号)を得て施行した。
【結果と考察】
 老化細胞除去薬投与により,加齢に伴う歯槽骨吸収の抑制が確認できた。C57BL6マウスの老化細胞除去薬投与群においては,薬物非投与群と比較し,有意な大動脈の脂肪沈着率の差は見られなかったが,89週齢のApoE-/-マウスの老化細胞除去薬投与群においては,大動脈の脂肪沈着率が低下した。これらの結果より,両疾患の関連性を研究するモデルになりうると思われた。今後,局所における老化細胞減少の確認,各臓器の老化抑制程度,体内におけるSASP因子の減少に対する検討を行っていく予定である。
(COI開示: なし)