The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

一般演題(ポスター発表)

一般演題(ポスター発表) » [ポスター発表8] 症例・施設

ポスター発表8 症例・施設

[P8-04] Down症候群患者のう蝕・歯周病予防における口腔管理について―2症例の歯科との関わりにおける検討―

○横山 滉介1、萩原 大2、鎌田 有一朗2、原 豪志2、髙野 知子2、李 昌一3、小松 知子2 (1. 神奈川歯科大学歯科診療支援学講座歯科メンテナンス学分野、2. 神奈川歯科大学全身管理歯科学講座障害者歯科学分野、3. 神奈川歯科大学健康科学講座災害歯科学分野)

【目的】
 Down症候群(DS)患者は知的能力障害を伴うため口腔の清潔に対する認識が低い傾向にあり,免疫機能の異常により歯周病の罹患リスクも高い。DSは通常,医学的管理の観点から生涯を3つに分けることが提唱されており,18歳までが小児期,19歳~40歳が成人期,41歳以降は老年期とされている。今回,長期にわたり口腔衛生管理を行った2症例の歯科との関わり,口腔ケアの状況と歯科疾患の経年的変化を分析し,歯周病やう蝕予防における課題を抽出したので報告する。なお、本報告は本人と家族の同意を得ている。
【症例の概要と処置】
 症例1:15歳の男子でう蝕治療を主訴に来院した。療育手帳はB2で,合併症はない。6歳の時,う蝕のため, 歯科を受診したが治療を断られ,以後一度も受診歴がない。口腔衛生状態は不良ですべての歯(26歯)にう蝕, 重度歯肉炎が認められた.症例2:19歳の女性で口腔衛生管理を主訴に来院した。療育手帳はA2で,合併症はない。1歳から歯科を受診し,定期的な口腔衛生管理が行われていた。口腔清掃状態は良好で現在歯28歯でう蝕, 歯肉炎はなかった。症例1:多数歯う蝕のため全身麻酔下で治療を行ない,その後は亜酸化窒素吸入鎮静法下にて継続した専門的口腔ケアと歯科衛生士(DH)による歯磨き指導(TBI)を行ってきた。指導内容をホームケアで十分生かすことができず,介助磨きへの拒否もあり,清掃状態は不良であった。50歳で残存歯数は12歯である。 症例2:幼少期からDHによる継続的なTBIが行われ,診療にも協力的で,早期より歯磨き習慣が定着し,口腔清掃状態も良好であった。50歳で残存歯数は28歯である。
【結果および考察】
 今回の2症例の口腔内状態の差は幼少期からのホームケアおよび歯科への協力性や重要性に対する意識の程度の差などにより生じたと考えられた。DSの平均寿命は約60歳に達し,口腔の健康を維持するためには幼少期から継続した口腔衛生管理が重要であると考えた。また,老年期では施設入所や保護者の高齢化など口腔衛生管理が不十分になることが想定される。幼少期から成人期,老年期を見据えた口腔疾患予防の重要性への意識化,TBI,歯科診療における適切な行動調整を行い,口腔衛生状態を良好に維持することが重要であると考えられた。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)