The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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ポスター発表8 症例・施設

[P8-06] 夫婦間介護の中、難渋した歯科介入の後、異なる転機に至った在宅療養中の要介護高齢者2症例の検討

○西尾 英莉、中村 純也、芝辻 豪士、足立 了平 (医療法人社団関田会ときわ病院 歯科口腔外科)

【目的】
 在宅療養中の要介護高齢者への歯科介入・食支援は介護力や介護者の病識の程度などにより難渋することも多い。今回ほぼ同病期の要介護高齢者2名に対して同様の介入を試みたにもかかわらず,異なる転機に至った2症例について検討する。
【症例の概要と処置】
 A氏,68歳,男性,要介護5。複数回の脳血管疾患の既往あり。2016年7月に当科受診,介入当初は介護者である妻への暴力や歯科介入への拒否的な発言もみられ,介護者も閉鎖的であり介入に難渋していた。ADLの低下から歯科訪問診療をすすめ,移行までに約半年かかったが,2019年9月より訪問診療開始となった。
B氏,72歳,男性,要介護5。パーキンソン病の既往あり。2019年9月より歯科訪問診療を開始した。B氏も介護者の妻への暴言や拒否的な発言が目立ち,口腔ケアのみの介入となっておりケアマネージャーも介入に難渋していた。
 なお,本報告の発表について患者本人・家族から同意を得ている。
【結果と考察】
 A氏に対しては,嚥下機能低下,介護者の負担軽減を考慮し,言語聴覚士の訪問リハビリやデイサービスの利用もすすめた。認知機能低下の進行に伴い、徐々に夫婦間の力関係が逆転し,介護者の病態理解も深まり,口腔ケアや嚥下評価,食支援の介入が円滑に進んだ。すすめていたリハビリやサービスも取り入れてくれ,栄養介入もでき現在は胃瘻造設し,楽しみ程度の食事を継続できている。一方B氏は,訪問リハビリやデイサービスの利用には常に消極的で,介護者にも病態を理解しようとする姿勢は最後までみられなかった。栄養介入もできず,歯科訪問診療開始後約1年で死亡となった。この2症例は,介入開始時の年齢,性別,ADL,認知機能,嚥下レベル, 口腔内環境,妻と2人暮らしである点はほぼ同様であった。転機を与えた要因には,認知機能低下様相、夫婦間の力関係の偏位,介護者の病態理解の程度, 教育歴などが考えられた。介入当初はA氏も介護者も閉鎖的であったが, 我々の介入をきっかけに徐々に介護者が主体的になり,ケアマネージャーや主治医,言語聴覚士など多職種と連携し支援することができた。在宅療養中の要介護高齢者には,我々の評価介入はもちろんのこと,介護者の性格,病識,要介護になる前の夫婦関係なども考慮した多職種によるアプローチが重要であると考えられた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)