The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表) » [ポスター発表8] 症例・施設

ポスター発表8 症例・施設

[P8-09] 当会高齢者外来での歯科衛生士の取組み
第6報脳梗塞後遺症患者に舌圧検査を応用し口腔衛生改善を試みた症例

○若尾 美知代、吉浜 由美子、高橋 恭子、似鳥 純子、石田 彩、佐藤 園枝、日吉 美保、東澤 雪子、吉岡 亜希子、鈴木 裕美子、間宮 秀樹、堀本 進、秋元 宏恵、薮内 貴章、渡辺 真人、小林 利也、秋本 覚、和田 光利、平山 勝徳、片山 正昭 (藤沢市歯科医師会)

【目的】
疾病を契機に全身状態悪化に伴う口腔機能低下を起こし、また認知機能の低下や手指の巧緻性低下による口腔衛生状態の悪化により来院するケースが少なくない。今回脳梗塞後遺症右片麻痺患者に対し口腔機能および衛生状態改善目的に口腔機能低下症の検査を応用した症例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
70歳男性。要介護4(認知症高齢者自立度Ⅲa、障害高齢者自立度B2)。脳梗塞後遺症右片麻痺、高次脳機能障害、症候性てんかん、高血圧症。2021年2月歯周病を主訴に配偶者と共に車椅子にて初診来院。現在歯28歯。初診時口腔内は麻痺の為か右側に多くのプラーク、食渣が残存し、う歯も右側に傾向的であった。主介護者である配偶者は双極性障害の為、口腔衛生に介入する事は無く自己管理。歯科医師によるう蝕治療と並行して専門的口腔衛生管理より開始した。一般的な口腔衛生指導の対応だけでは口腔衛生状態の改善がみられず、口腔機能低下症の検査にて数値化する事での評価を試みた。
初回の口腔機能低下症検査の際に、舌圧検査ではバルーン部を舌で上手く挟むことも出来ず、高次脳機能障害による失認症・失行症も疑えたが、舌可動域拡大による食渣の停滞防止を目的に舌トレーニングを試みた。舌を前後左右に出す簡単な舌体操から始め、徐々に回数と時間を増やしていく事とした。同時に自宅では、箸とスプー ンで食事を摂るとの事から、食事前に自主訓練が出来るようスプーンを使用した方法も指導した。その後舌圧計を用いて、舌の筋力をつける為、舌でバルーン部を口蓋に押し付けるトレーニングも行い、都度測定される数値を患者と共有し、モチベーションの向上も期待した。
なお、本報告の発表について患者本人とその家族から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
 初回計測不能であった舌圧検査から2か月後の最高舌圧値は8.6kPaと僅かに上昇し、3か月後には、14.7kPaまで数値を伸ばした。それに伴い今まで改善が困難であった右側に停滞する食渣とプラークの付着も減少を見せ始めた。
今回、一般的な口腔衛生指導によるセルフケアの向上が困難な脳梗塞後遺症右片麻痺・高次脳機能障害患者に対して口腔機能低下症の検査を行い、数値化をすることでの口腔機能改善を試みた。今後も患者の全身状態を確認しながら口腔健康管理に努めていく所存である。
(COI開示なし)
(倫理審査対象外)