The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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ポスター発表8 症例・施設

[P8-14] ビスホスホネート製剤中止後に顎骨壊死を発症し,下顎骨骨折を来した前立腺癌患者の症例

○服部 馨、原田 枝里、髙澤 理奈、久野 彰子 (日本医科大学付属病院 口腔科)

【目的】
 薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)発症の多くは,原因となる薬剤投与中に認められる。しかし,今回,ビスホスホネート(BP)製剤投与中止後にMRONJが発症し,その後顎骨骨折を来した症例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 77歳,男性。前立腺癌多発骨転移に対して,当科受診の11年前から当院泌尿器科でホルモン療法とBP製剤が投与されていた。既往歴は,慢性硬膜下血腫,深部静脈血栓症,C型肝炎,高血圧であり,1年前に非定型大腿骨骨折を起こしたため,BP製剤は中止となっていた。
 患者は,X年1月に右下歯肉の腫脹を主訴に当科へ院内紹介受診となった。初診時に右頬部の腫脹と,歯が欠損している下顎右側舌側歯肉に潰瘍が認められ,義歯は歯肉腫脹により使用困難となっていた。腫脹の原因は明らかではなかったが,感染を疑い抗菌薬を投与したところ症状はすぐに改善し,義歯の使用も可能となった。しかし,その後も断続的に同部位に歯肉腫脹や疼痛が出現し,3月には持続的な骨露出が認められたため,MRONJと判断した。経済的理由により継続した治療は希望されず,X+1年11月まで対症療法を行った。X+2年2月に分離した腐骨の除去を行い,本人の希望により近医歯科へ転院したが,疼痛の持続と咀嚼不全を理由に再び当科受診となった。同年4月にオルソパントモ撮影を行ったところ,右側下顎骨骨体部骨折が判明した。他院の口腔外科に外科療法を依頼し,7月に下顎区域切除術,プレートならびに遊離腹直筋皮弁による再建術が施行された。術後, 当科で皮弁を避けて部分床義歯を製作し,きざみ食の摂取が可能となった。11月に体動困難となり,他院の緩和ケア病棟に入院となったため,その後の詳細は不明である。
本報告の発表について患者本人から同意を得ている。
【結果と考察】
 BP製剤は,骨に長期間残留する物理化学的性質を有している。今回の症例は,BP製剤が約10年間と長期に投与されており,薬剤中止後1年でMRONJが発症し,さらにその1年後には顎骨骨折を来した。今後は,BP製剤投与中の患者だけでなく,薬剤投与終了後であってもMRONJや顎骨骨折のリスクに注意する必要があると考えられた。また,服用薬だけでなく,注射剤,および過去に投与された薬剤についても確認を行うべきであると考えられた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)