The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表)

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ポスター発表9 その他

[P9-03] 薬剤性口腔乾燥症患者の特性および治療による自覚症状改善に関する検討

○伊藤 加代子1、泉 直子2、濃野 要3、船山 さおり1、金子 昇4、井上 誠1,5 (1. 新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科、2. ファイザー株式会社 インターナルメディスンメディカルアフェアーズ部、3. 新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学講座口腔保健学分野、4. 新潟大学大学院医歯学総合研究科 予防歯科学分野、5. 新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
 口腔乾燥症は高齢者の約4割に認められるといわれており,乾燥感や会話困難感などによるQOLの低下やう蝕, 歯周病等が増悪する可能性がある.口腔乾燥症の原因は,シェーグレン症候群,薬剤の副作用,ストレスなど多岐にわたる.薬剤性口腔乾燥症患者の中には,口腔乾燥感のため,原疾患に対する薬剤のコンプライアンスが低下している者も存在する.期待通りの原疾患の治療を行うためには口腔乾燥感の緩和が重要である.しかし,薬剤性口腔乾燥症患者の口腔乾燥感改善に関する検討は少ない.よって,薬剤性口腔乾燥症の実態を明らかにし,改善に関わる因子を検討することを目的として,本研究を行った.
【方法】
 新潟大学医歯学総合病院くちのかわき・味覚外来を,口腔乾燥感のため受診した患者のうち,安静時唾液分泌量が0.1 mL/min以下で,口腔乾燥症の治療を行った薬剤性口腔乾燥症患者490名を対象とした.年齢,罹病期間, 既往歴,服用薬剤,精神健康度,安静時唾液分泌量を調べた.症状と診断に応じて,口腔保湿剤の紹介,唾液腺マッサージの指導,漢方薬や唾液分泌促進剤の処方を行い,6か月後の口腔乾燥感の改善の有無に関連する因子について検討した.
【結果および考察】
 年齢の中央値は70(17-89)歳で,女性が84.7%と大半を占めていた.罹病期間の中央値は19か月であった. 服用薬剤の中央値は5(1-22)剤で,抗コリン薬は 242名 (49.4%)が服用していた.診断が薬剤性のみである者は42名(8.6%)で,残りの91.4%は複数の診断がついていた.6か月後の口腔乾燥感が改善した者は338名(75.3%)であった.抗コリン服用者に限ると,65歳未満の改善率は61.8%,65歳以上は79.1%で,65歳未満の者の方が有意に低かった(p=0.006).また,精神疾患がある者は,無い者より有意に改善率が低かった(p=0.010). 口渇の副作用がある薬剤数あるいは抗コリン薬数が増えるにつれて改善率が低下していた(p=0.014, 0.018). したがって,処方医に対して,口腔乾燥感改善率に関連する因子について情報提供し,口腔乾燥感に対する治療介入が進めば,薬剤性口腔乾燥症患者の口腔乾燥感が改善し,薬剤のコンプライアンス向上につながるかもしれない.
(COI 開示:ファイザー株式会社) (新潟大学 倫理審査委員会承認番号2020-0306)