[SY4-3] 重症心身障害児者から学ぶ口腔機能低下
【略歴】
1988年 東京医科歯科大学医学部卒業、同大学附属病院小児科ならびに関連病院にて臨床研修
1995年 東京都神経科学総合研究所神経病理学研究部門流動研究員
1997年 東京都立府中療育センター小児科医員
2000年 カリフォルニア大学サンフランシスコ校神経内科postdoctoral fellow
2002年 東京都立府中療育センター小児科医員
2003年 同医長
2018年 同部長
現在に至る
1988年 東京医科歯科大学医学部卒業、同大学附属病院小児科ならびに関連病院にて臨床研修
1995年 東京都神経科学総合研究所神経病理学研究部門流動研究員
1997年 東京都立府中療育センター小児科医員
2000年 カリフォルニア大学サンフランシスコ校神経内科postdoctoral fellow
2002年 東京都立府中療育センター小児科医員
2003年 同医長
2018年 同部長
現在に至る
【抄録】
重度の身体障害と知的障害を併せ持つ重症心身障害児者の老化は,健常者に比べて早いといわれている。老化の原因の一つは「活性酸素によって起こる体の錆び」(酸化ストレス)と考えられており,活性酸素を取り除く様々な「抗酸化システム」も生体内には存在し,老化が進まないように機能している。酸化ストレスと抗酸化システムのバランスが崩れ,抗酸化能が急激に減少する中高年期から老化は加速していく。本講演では重症心身障害児者の病態研究や日常診療を通して,口腔機能低下や摂食・嚥下機能低下を食い止める手掛かりを探ってみたい。
重症心身障害児者の酸化ストレスと抗酸化能を調べてみると,健常者に比べて酸化ストレスが亢進し,抗酸化能が低下していることが分かった。また酸化ストレス亢進の程度は呼吸障害の重症度スコアと正の相関がみられた。これらの結果は,重症心身障害児者では老化が進行しやすいバックグラウンドがあること,特に呼吸障害を持つ重症心身障害児者ではその傾向が強いことを示唆している。
また老化の進行が速い重症心身障害児者の多くは,摂食・嚥下に問題を抱えている。生まれたときから重度の摂食・嚥下障害があり,経口摂取が困難で経管栄養に依存している場合や,経口摂取が何とか出来ていても加齢に伴い摂食・嚥下機能が低下し経口摂取が困難になっていく場合もある。当センターにおける検討では,加齢に伴う摂食・嚥下機能の退行は男女別では男性に優位で,運動機能障害が重度の重症心身障害児者で目立った。経口摂取から経管栄養に移行した年代は40歳代が最も多く,次いで50歳代であった。さらに運動機能の比較的良い「動く重症心身障害児者」にも加齢による摂食・嚥下機能障害は進行していた。経口摂取困難による栄養障害は,サルコペニアを引き起こし,運動機能,摂食・嚥下機能,呼吸機能などの低下を招いてさらに全身状態悪化の悪循環につながる。栄養状態を悪化させないこと,運動機能を落とさないことを中心に全身管理を行っている。
重症心身障害児者の病態から得られた知見から,どうすれば摂食・嚥下機能,口腔機能の低下を食い止められるか,その答えを見つけたいと思っているが,現時点では残念ながら明確な答えは見つかっていない。しかしながら,重症心身障害児者の病態研究にその手掛かりは必ずあると信じて日々の診療を行っている。
重度の身体障害と知的障害を併せ持つ重症心身障害児者の老化は,健常者に比べて早いといわれている。老化の原因の一つは「活性酸素によって起こる体の錆び」(酸化ストレス)と考えられており,活性酸素を取り除く様々な「抗酸化システム」も生体内には存在し,老化が進まないように機能している。酸化ストレスと抗酸化システムのバランスが崩れ,抗酸化能が急激に減少する中高年期から老化は加速していく。本講演では重症心身障害児者の病態研究や日常診療を通して,口腔機能低下や摂食・嚥下機能低下を食い止める手掛かりを探ってみたい。
重症心身障害児者の酸化ストレスと抗酸化能を調べてみると,健常者に比べて酸化ストレスが亢進し,抗酸化能が低下していることが分かった。また酸化ストレス亢進の程度は呼吸障害の重症度スコアと正の相関がみられた。これらの結果は,重症心身障害児者では老化が進行しやすいバックグラウンドがあること,特に呼吸障害を持つ重症心身障害児者ではその傾向が強いことを示唆している。
また老化の進行が速い重症心身障害児者の多くは,摂食・嚥下に問題を抱えている。生まれたときから重度の摂食・嚥下障害があり,経口摂取が困難で経管栄養に依存している場合や,経口摂取が何とか出来ていても加齢に伴い摂食・嚥下機能が低下し経口摂取が困難になっていく場合もある。当センターにおける検討では,加齢に伴う摂食・嚥下機能の退行は男女別では男性に優位で,運動機能障害が重度の重症心身障害児者で目立った。経口摂取から経管栄養に移行した年代は40歳代が最も多く,次いで50歳代であった。さらに運動機能の比較的良い「動く重症心身障害児者」にも加齢による摂食・嚥下機能障害は進行していた。経口摂取困難による栄養障害は,サルコペニアを引き起こし,運動機能,摂食・嚥下機能,呼吸機能などの低下を招いてさらに全身状態悪化の悪循環につながる。栄養状態を悪化させないこと,運動機能を落とさないことを中心に全身管理を行っている。
重症心身障害児者の病態から得られた知見から,どうすれば摂食・嚥下機能,口腔機能の低下を食い止められるか,その答えを見つけたいと思っているが,現時点では残念ながら明確な答えは見つかっていない。しかしながら,重症心身障害児者の病態研究にその手掛かりは必ずあると信じて日々の診療を行っている。