The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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シンポジウム4
学術シンポジウム2:生涯における口腔機能の維持を考える ~青年期から壮年期には何が起こっているのか?~

Sat. Jun 11, 2022 4:20 PM - 5:40 PM 第1会場 (りゅーとぴあ 2F コンサートホール)

座長:池邉 一典(大阪大学大学院歯学研究科有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野 教授)、田村 文誉(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック 教授)

企画:学術委員会

[SY4-4] 高齢者に至る全身状態の変化をもとに口腔機能低下の予防を考える

○丸山 道生 (田無病院)

【学歴】
1980年 東京医科歯科大学医学部卒業

【職歴】
1980年 東京医科歯科大学第一外科入局
1983年 東京都立駒込病院病理科・外科医員
1990年 カリフォルニア大学サンディエゴ校外科研究員
1992年 東京医科歯科大学第一外科助手
1993年 東京都立大久保病院外科医長
2004年 東京都職員共済組合青山病院外科部長
2005年 東京都保健医療公社大久保病院外科部長
2014年 現職、田無病院院長
  元 東京医科歯科大学外科臨床教授
  現 東邦大学医学部外科客員教授

【所属学会】
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本臨床栄養代謝学会、日本外科代謝栄養学会、日本在宅医療連合学会、日本癌治療学会など
専門医等:日本外科学会指導医・専門医、日本消化器外科学会指導医・専門医、日本臨床栄養代謝学会指導医
【抄録】
 高齢者の身体組成と代謝・機能の変化  若年者から高齢者への体構成成分の変化は、筋肉量の減少と相対的な脂肪量の増加に代表され、サルコペニアの傾向を示す。また、細胞内液量が40%から30%に減少するのに伴い体内水分量が低下し、尿の濃縮・希釈といった腎機能の低下にあいまって、脱水や電解質異常を起こしやすくなる。神経伝達速度、肺活量、心係数、腎血流量など、各臓器の生理機能は低下し、唾液の分泌量も低下する。高齢者における代謝の特徴は、筋肉量低下に伴い基礎代謝が低下する。筋細胞でのタンパク同化の閾値が上がりタンパク同化抵抗性を示す。また内臓脂肪の増加やlow gradeの炎症反応の持続によりインスリン抵抗性が認められるようになる。 高齢者におけるサルコペニア、疾患の頻度の増加  高齢者になると筋肉量や筋力、パフォーマンス能力が低下し、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに至る。また高齢者は低栄養や疾患の罹患も増え、二次性サルコペニアも加わる。また、疾患治療目的の内服薬も増え、ポリファーマシーによるフレイルの進行も認められる。 サルコペニアと口腔機能低下の関連  口腔機能低下の進行は口腔自体の要因と、全身状態の要因の両者が関連する。高齢者では口腔機能低下が栄養摂取に影響し低栄養となりフレイル・サルコペニアに至るという研究は現在まで多くなされている。それとは逆にサルコペニアが口腔機能低下を進行させるとも考えられる。すなわち、口腔機能低下とサルコペニアは相互に作用して負のスパイラルを呈するのだろう。
 口腔機能低下症の7つの要素のうち、咬合力低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下は筋肉量・筋力低下に関連し、サルコペニアの影響を強く受け、また、舌口唇運動機能の低下も口周囲筋肉のパフォーマンスと関連し、サルコペニアと相関するだろう。7要素のうち5つはサルコペニア関連となる。残りの口腔不潔と口腔乾燥は、唾液量の低下、口腔内細菌叢の加齢による変化、口腔ケアが関連している。 口腔機能低下を食い止める  以上のように口腔機能低下はサルコペニアの予防で進行を抑制する可能性が考えられる。すなわち、サルコペニア予防としての栄養療法と運動療法に効果が期待される。加えて、精神的、社会的な原因による高齢者低栄養にも対処する。また、成人病などによる二次性サルコペニアを起こさないための疾患予防、唾液分泌の低下を予防するために脱水の予防や唾液分泌を促進する食事、毎日の口腔ケアの習慣にも注意を払う必要がある。