[SY6-1] 老年科医の立場からみた認知症診療のトレンドと医科歯科連携
【略歴】
医療法人社団創福会理事長.ふくろうクリニック等々力院長.東京大学医学部附属病院老年病科非常勤講師.日本赤十字看護大学地域看護学非常勤講師.1999年浜松医科大学卒業.東京大学医学部附属病院内科研修医、自治医科大学附属大宮医療センター、東京大学医学部附属病院老年病科を経て、2008年より東京大学医学部附属病院地域医療連携部助教、2013年より現職.2007年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(医学博士).玉川医医師会在宅医療部担当理事.日本老年医学会老年病専門医・指導医・代議員.日本老年精神医学会専門医・指導医.日本認知症学会専門医・指導医.日本内科学会総合内科専門医、日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医.2021年4月に、ふくろうクリニック自由が丘を開設し、物忘れ外来、フレイル外来、地域リハビリテーションに取り組む.
医療法人社団創福会理事長.ふくろうクリニック等々力院長.東京大学医学部附属病院老年病科非常勤講師.日本赤十字看護大学地域看護学非常勤講師.1999年浜松医科大学卒業.東京大学医学部附属病院内科研修医、自治医科大学附属大宮医療センター、東京大学医学部附属病院老年病科を経て、2008年より東京大学医学部附属病院地域医療連携部助教、2013年より現職.2007年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(医学博士).玉川医医師会在宅医療部担当理事.日本老年医学会老年病専門医・指導医・代議員.日本老年精神医学会専門医・指導医.日本認知症学会専門医・指導医.日本内科学会総合内科専門医、日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医.2021年4月に、ふくろうクリニック自由が丘を開設し、物忘れ外来、フレイル外来、地域リハビリテーションに取り組む.
【抄録】
老年科では、認知症を疾患としてではなく、認知症の人を全体として診るよう努めています。認知症の人に対するケアは大きく分けて2つの方向性があります。
一番大切なことは、認知症の人のQOL:生活の質を高めることです。そのために私達は、診断後支援、ケアラー支援、非薬物療法、アウトリーチ、BPSDに対する医療介護連携、在宅入院にこだわっています。認知症医療は、認知症疾患医療センターによる画像診断と薬物療法が中心ではありません。認知症の人にとっては、生活の場での医療と介護が大切です。そもそも認知症の方は病院への受診を嫌がりますので、往診が必要となる場合があります。せっかく受診してくれた方が、早期診断、早期絶望にならないように、認知症診断直後のケアが重要です。認知症の人が、認知機能障害を背負いながらも、人間らしく幸福に暮らすために必要な知恵を一緒に探しましょう。特に、本人にとって快刺激となる非薬物療法の導入、介護者への介護方法の指導が重要です。認知症が進行してきても、BPSDや身体合併症を効果的に治療する在宅医療システムを構築しましょう。歯科医師に対する期待は、訪問歯科医療の提供に加えて、認知症の進行を見越した歯科治療です。歯磨きができなくなる、入れ歯が入れられなくなる、咀嚼嚥下機能が低下することを予測して、歯科治療をお願いします。東京都世田谷区では、認知症と診断された方は、歯科健診を受けることができます。
次に大切なことは、認知症になる前に地域住民と関わり、認知機能障害の発症や進行を遅らせることです。認知症の危険因子は、低教育歴、聴力障害、外傷性脳損傷、高血圧、糖尿病、肥満、アルコール過剰摂取、喫煙、うつ、社会的孤立、身体不活動、大気汚染であることがわかっています。危険因子に対する介入は、かかりつけ医の役割です。近年、若い時にスポーツで脳震盪を経験すると、その後に認知症を始めとする神経変性疾患になりやすいことがわかってきました。スポーツ医学と認知症予防の関りも注目され始めています。認知症を発症する前に、多くの方はロコモやフレイルになります。ロコモやフレイルの方に対して、食事、運動、社会参加への介入を開始します。久山町研究において、日本人では低体重が認知症の危険因子となることが明らかとなったため、サルコペニア(筋肉減弱症)に注目します。また、医師が高齢者と地域とのつながりをサポートする社会的処方についても注目します。歯牙欠損や歯周病が認知症の危険因子になるかもしれないとの説があります。2020年度から、後期高齢者に対する健康診査が、「フレイル健診」と呼ばれるものに変わりました。その中には、オーラルフレイルに関する質問項目が含まれます。歯科医師との連携によるフレイル予防が求められています。
老年科では、認知症を疾患としてではなく、認知症の人を全体として診るよう努めています。認知症の人に対するケアは大きく分けて2つの方向性があります。
一番大切なことは、認知症の人のQOL:生活の質を高めることです。そのために私達は、診断後支援、ケアラー支援、非薬物療法、アウトリーチ、BPSDに対する医療介護連携、在宅入院にこだわっています。認知症医療は、認知症疾患医療センターによる画像診断と薬物療法が中心ではありません。認知症の人にとっては、生活の場での医療と介護が大切です。そもそも認知症の方は病院への受診を嫌がりますので、往診が必要となる場合があります。せっかく受診してくれた方が、早期診断、早期絶望にならないように、認知症診断直後のケアが重要です。認知症の人が、認知機能障害を背負いながらも、人間らしく幸福に暮らすために必要な知恵を一緒に探しましょう。特に、本人にとって快刺激となる非薬物療法の導入、介護者への介護方法の指導が重要です。認知症が進行してきても、BPSDや身体合併症を効果的に治療する在宅医療システムを構築しましょう。歯科医師に対する期待は、訪問歯科医療の提供に加えて、認知症の進行を見越した歯科治療です。歯磨きができなくなる、入れ歯が入れられなくなる、咀嚼嚥下機能が低下することを予測して、歯科治療をお願いします。東京都世田谷区では、認知症と診断された方は、歯科健診を受けることができます。
次に大切なことは、認知症になる前に地域住民と関わり、認知機能障害の発症や進行を遅らせることです。認知症の危険因子は、低教育歴、聴力障害、外傷性脳損傷、高血圧、糖尿病、肥満、アルコール過剰摂取、喫煙、うつ、社会的孤立、身体不活動、大気汚染であることがわかっています。危険因子に対する介入は、かかりつけ医の役割です。近年、若い時にスポーツで脳震盪を経験すると、その後に認知症を始めとする神経変性疾患になりやすいことがわかってきました。スポーツ医学と認知症予防の関りも注目され始めています。認知症を発症する前に、多くの方はロコモやフレイルになります。ロコモやフレイルの方に対して、食事、運動、社会参加への介入を開始します。久山町研究において、日本人では低体重が認知症の危険因子となることが明らかとなったため、サルコペニア(筋肉減弱症)に注目します。また、医師が高齢者と地域とのつながりをサポートする社会的処方についても注目します。歯牙欠損や歯周病が認知症の危険因子になるかもしれないとの説があります。2020年度から、後期高齢者に対する健康診査が、「フレイル健診」と呼ばれるものに変わりました。その中には、オーラルフレイルに関する質問項目が含まれます。歯科医師との連携によるフレイル予防が求められています。