一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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シンポジウム9
スポンサードシンポジウム:咀嚼研究の最新像

2022年6月12日(日) 09:00 〜 10:00 第1会場 (りゅーとぴあ 2F コンサートホール)

座長:井上 誠(新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授)、山村 健介(新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生理学分野 教授)

共催:株式会社ロッテ
*専門医申請者研修

[SY9-2] 咀嚼能力と全身健康 -咀嚼チェックガムを用いた咀嚼能力評価-

○濵 洋平 (東京医科歯科大学 高齢者歯科学分野)

【略歴】
2013年 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 博士課程修了 博士(歯学)
2014年 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 特任助教
2019年 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 助教(現職)
【抄録】
 超高齢社会を迎えた我が国において、要介護高齢者の増加は解決しなければならない喫緊の課題の1つである。要介護となることで高齢者個々人やその家族などの生活が制限されることはもちろんのこと、医療・福祉など社会補償費の増大を招き、その結果国力の低下を惹起することにもなる。介護予防を達するためには多領域からのアプローチが必須であるが、近年、歯科領域からの対応として口腔機能低下症・オーラルフレイルの概念が知られるようになった。その中でも咀嚼は主要な口腔機能の1つであり、咀嚼能力が健康・要介護関連因子と関連があることが報告されている。そのような状況の中、咀嚼能力の改善と言った歯科領域からのアプローチで介護予防を図ることが、社会的にも大きな注目を集めるようになり、簡便かつ効果的な咀嚼能力評価法が必要とされるようになった。その咀嚼能力を評価する1つのツールとして「キシリトール咀嚼チェックガム®️」がよく用いられている。
 咀嚼チェックガムは株式会社ロッテと東京医科歯科大学 高齢者歯科学分野(旧、全部床義歯補綴学分野)において共同開発された、咀嚼能力を評価するためのチューインガムである。「誰でも」、「誰にでも」使用可能であることをコンセプトとしており、多くのシチュエーションにおいて簡便かつ効果的に利用される。咀嚼前は緑色であるが、咀嚼の進行と共にその色は赤色へと変わっていき、その咀嚼前後の色変わりの程度を判定することで、咀嚼能力を数値化することが可能である。未就学児から健常成人、さらには全部床義歯装着者にも適用できることが報告されている。その用途は多岐に辺り、研究、臨床はもちろんのこと、ご自身や家族、また保育施設などにおける健康チェックツールとしての利用や、咀嚼の重要性を啓発するイベントに利用することもできる。
 本シンポジウムでは限られた時間ではあるが、咀嚼チェックガムを中心とした咀嚼能力評価と全身健康の関連について紹介させて頂く予定である。まず様々な咀嚼能力評価法について概観したのち、歯の欠損また欠損補綴による咀嚼能力への影響について、簡単に研究を紹介する。その後、咀嚼チェックガムに関するこれまでの研究とその応用について紹介する。まず、咀嚼チェックガム自体を対象とした研究のレビューを行いながら、その開発の経緯、歴史を振り返り、咀嚼チェックガム使用法、注意点について整理する。さらに咀嚼チェックガムにより評価された咀嚼能力と健康、介護予防との関連について、現在分かっていることをまとめさせて頂く。
 本シンポジウムが咀嚼能力評価から健康、介護予防へと連なる一助となれば幸いである。