[SY11-5] 市中病院で医師から求められる歯科医師になるために

2005年3月 九州大学歯学部 卒業
2005年4月 九州大学病院第一口腔外科 研修医
2011年3月 九州大学大学院歯学研究科修了 博士(歯学)取得
2013年4月 九州大学病院救命救急センター 医員(出向)
2016年4月 九州大学病院顎顔面口腔外科 助教
2018年4月 公立八女総合病院歯科口腔外科 医長 現在に至る
日本口腔外科学会専門医 日本有病者歯科医療学会専門医 日本臨床栄養代謝学会認定歯科医師
日本化学療法学会認定歯科医師 日本小児口腔外科学会指導医 日本顎関節学会暫定指導医
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士 日本抗加齢医学会専門医
【抄録】
病院歯科口腔外科においては歯科口腔外科疾患の治療,周術期口腔機能管理,地域歯科診療所の後方支援,有病者歯科医療,摂食嚥下リハビリテーションなど多岐にわたる診療が展開されている.地域性や各施設の人材により多少診療内容は異なるが,近年の高齢化の進行とともに地域歯科診療所のみならず医科からも病院歯科への期待や要望は高まっていると考えられる.周術期等口腔機能管理の保険収載以降,がん治療における口腔管理の重要性や医科歯科連携の必要性が広く周知されたことで,院内に歯科口腔外科を設置する病院はわずかではあるが増加している.
公立八女総合病院は福岡県の南部にある人口約13万人の八女筑後医療圏に位置する急性期病院である.医療圏の高齢化率は2020年の時点で35.6%とかなり高齢化が進んでいる地域であるが,当医療圏内には病院歯科口腔外科がなく,院内の医師に加えて地域の歯科医師会からも二次歯科診療機関としての歯科口腔外科設置のニーズがあったことから,2018年に歯科口腔外科が新設された.私は歯科口腔外科の立ち上げに携わる機会をいただき,現在は地域歯科診療支援病院として外来患者の口腔外科手術や院内他科と連携した周術期口腔機能管理などに対応している.
病院歯科口腔外科の重要な役割として,地域の歯科診療所と連携して行う歯科二次診療,院内医科との医科歯科連携がある.さらに,高齢者の増加とともに多くの基礎疾患に罹患し多数の薬剤を内服している有病高齢者に対し安全な歯科医療を提供するという社会的なニーズは高まっていることから,当院では口腔外科専門医の常勤に加え,複数の補綴治療専門医に非常勤で勤務してもらうことで口腔外科疾患の治療のみではなく歯科治療全般に対応し,入院中に集中的に歯科治療介入を実施し退院までにできるだけ口腔内の状態を整えてから地域に戻っていただくようにしている.院内医科との医科歯科連携においては,医科治療中の患者背景を理解した上で歯科としての治療プランを提供している.特に,周術期口腔機能管理においては,医科疾患の治療の流れを把握し、治療中に生じる口腔内有害事象に適切に対応する必要がある.また,栄養サポートチームや緩和ケアチームなどのチーム医療においても歯科専門職が医学的な知識を持ってカンファレンスやラウンドに参加し,他のメディカルスタッフと共通の言語で討議を行うことで,チーム医療介入患者に対して適切な時期に必要な歯科治療や口腔ケアを提供できるようにしている.
本講演では,急性期病院歯科口腔外科の開設から数年間の発展過程,一般歯科診療所との地域連携および病院内での医科歯科連携の実情をご紹介したい.また,市中病院の歯科で勤務するにあたって求められるスキルや知識についても考察したい.
病院歯科口腔外科においては歯科口腔外科疾患の治療,周術期口腔機能管理,地域歯科診療所の後方支援,有病者歯科医療,摂食嚥下リハビリテーションなど多岐にわたる診療が展開されている.地域性や各施設の人材により多少診療内容は異なるが,近年の高齢化の進行とともに地域歯科診療所のみならず医科からも病院歯科への期待や要望は高まっていると考えられる.周術期等口腔機能管理の保険収載以降,がん治療における口腔管理の重要性や医科歯科連携の必要性が広く周知されたことで,院内に歯科口腔外科を設置する病院はわずかではあるが増加している.
公立八女総合病院は福岡県の南部にある人口約13万人の八女筑後医療圏に位置する急性期病院である.医療圏の高齢化率は2020年の時点で35.6%とかなり高齢化が進んでいる地域であるが,当医療圏内には病院歯科口腔外科がなく,院内の医師に加えて地域の歯科医師会からも二次歯科診療機関としての歯科口腔外科設置のニーズがあったことから,2018年に歯科口腔外科が新設された.私は歯科口腔外科の立ち上げに携わる機会をいただき,現在は地域歯科診療支援病院として外来患者の口腔外科手術や院内他科と連携した周術期口腔機能管理などに対応している.
病院歯科口腔外科の重要な役割として,地域の歯科診療所と連携して行う歯科二次診療,院内医科との医科歯科連携がある.さらに,高齢者の増加とともに多くの基礎疾患に罹患し多数の薬剤を内服している有病高齢者に対し安全な歯科医療を提供するという社会的なニーズは高まっていることから,当院では口腔外科専門医の常勤に加え,複数の補綴治療専門医に非常勤で勤務してもらうことで口腔外科疾患の治療のみではなく歯科治療全般に対応し,入院中に集中的に歯科治療介入を実施し退院までにできるだけ口腔内の状態を整えてから地域に戻っていただくようにしている.院内医科との医科歯科連携においては,医科治療中の患者背景を理解した上で歯科としての治療プランを提供している.特に,周術期口腔機能管理においては,医科疾患の治療の流れを把握し、治療中に生じる口腔内有害事象に適切に対応する必要がある.また,栄養サポートチームや緩和ケアチームなどのチーム医療においても歯科専門職が医学的な知識を持ってカンファレンスやラウンドに参加し,他のメディカルスタッフと共通の言語で討議を行うことで,チーム医療介入患者に対して適切な時期に必要な歯科治療や口腔ケアを提供できるようにしている.
本講演では,急性期病院歯科口腔外科の開設から数年間の発展過程,一般歯科診療所との地域連携および病院内での医科歯科連携の実情をご紹介したい.また,市中病院の歯科で勤務するにあたって求められるスキルや知識についても考察したい.