一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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シンポジウム13
歯科衛生士シンポジウム:歯科衛生士のリサーチマインド ~高齢者への根拠ある口腔健康管理の実践を目指して~

2022年6月12日(日) 14:10 〜 16:00 第2会場 (りゅーとぴあ 5F 能楽堂)

座長:伊藤 加代子(新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科 病院講師)、森下 志穂(明海大学保健医療学部口腔保健学科 助教)

企画:歯科衛生士関連委員会
*日本歯科衛生士会認定更新研修

[SY13-3] 歯科衛生研究が「伝わる」一言になる!地域での実践例

○三好 早苗 (広島大学大学院医系科学研究科 公衆口腔保健学研究室)

【略歴】
1998年 広島大学歯学附属歯科衛生士学校 卒後
1998年 一般歯科診療所勤務
2008年 広島県竹原市の地域歯科保健事業に従事
2013年 広島大学歯学部客員講師
2018年 広島大学大学院医系科学研究科 博士課程前期修了 修士(口腔健康科学)
2021年 一般社団法人広島県歯科衛生士会 会長
【抄録】
平成18年度の介護保険法改正により介護予防事業が創設され,高齢者の口腔機能向上を目的としたプログラムが各地域で実施されてきた。近年では,「高齢者の保健事業と介護予防との一体的実施」において通いの場への医療専門職(保健師,管理栄養士,歯科衛生士等)の介入による疾病予防,生活機能の改善が期待されている。
このように,私たち歯科衛生士は,15年以上前から地域の介護予防事業や口腔健康管理に携わってきた。しかし,その成果や効果的な介入方法について科学的に証明された報告は少なく,その多くは学術大会での発表にとどまっているのが現状ではないだろうか。残念ながら,どんなに優れた研究成果を学術大会で発表しても,その後,論文として発表されなければ,実践によって得られた知見は根拠がないものと判断されてしまう。研究結果を論理的に分析し,文章化して論文として発表する作業は容易ではないが,やらなければ研究はそこで埋もれてしまい,臨床や現場で活かすことができなくなってしまうのである。そのため,歯科衛生士が自らの経験や臨床で疑問に感じたことを研究に昇華させ,論文として発表することは,社会に貢献するだけでなく,論文を読んだ各分野の歯科衛生士の資質や実践力の向上に寄与するものと考えられる。
私が研究をはじめたきっかけは,地域の通いの場への関わりの中で,「口腔体操を長期間継続して実施すると,高齢者にどのような効果をもたらすだろうか?」という疑問からだった。研究をはじめるには,過去の文献を調べ,これまでに分かっていることと分かっていないことを明確にして,その研究を行う価値があるかどうかを検討する必要がある。多くの文献の中から,自分の研究と関連する文献を探し出すのは労力がいる作業であるが,さまざまな研究との出会いは,歯科衛生士としての知識や視野を広げるきっかけになるといえる。私自身がこの作業を夢中になって取り組むことができたのは,きっと「知りたい!」「解決したい!」と思うリサーチマインドがあったからであろう。目の前の出来事に興味・関心を持ち,「なぜ?」「どうして?」と深く考ながら調べていくことは,心がワクワクするような楽しいものである。また,研究成果をまとめる作業も研究をはじめる以上に大変ではあるが,自分が実施してきた研究内容を改めて客観的に見直す良い機会となるといえる。
本シンポジウムでは,歯科衛生研究をはじめるにあたり取り組んだこと,そして,研究成果をどのように地域で活用しているかについて実践例を紹介していきたい。