The 34th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター1

Fri. Jun 16, 2023 12:00 PM - 1:30 PM ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-6] 高齢で抗凝固薬を使用している患者に対する多数歯抜歯の1例

○青木 優美1、寺中 智2,3 (1. 町田NI歯科、2. 足利赤十字病院、3. 東京医科歯科大学病院)

○ 青木優美1),寺中智2), 3)
町田NI歯科1),足利赤十字病院2),東京医科歯科大学病院3)
【緒言・目的】
 抗凝固療法抜歯に際して通常の投与量を維持するとともに,局所止血のための信頼できる手順を開発する重要性が増している。認知症・抗凝固療法中・多数歯抜歯の必要性といったケースへの対応は実臨床において多く見られる。そこで,局所止血剤および止血シーネの使用が奏功した症例を報告する。
【症例および経過】
 76歳,発作性心房細動,心不全,糖尿病(HbA1c7.6%),認知症(HDS-R:13点)の既往あり。初診時より右上臼歯部の動揺と慢性的疼痛を訴える(残存歯321T123,654321⊥1235)。⑥⑤④」連結冠は垂直動揺を認め,歯根破折しており,歯冠補綴の適用ではないと判断。また根面被覆等の保存処置は,治療への協力が困難であり,将来の全身リスクを勘案し,抜歯適応と診断した。
 発作性心房細動は脳梗塞のリスク因子となるため抗凝固療法を行われている。その点を考慮し,抗凝固薬を休薬せず抜歯を行った。出血リスクについては,術前にかかりつけ医へ抗凝固療法を継続して抜歯を行う旨の通知とPT-INR2.5以下への術前管理を依頼した。また,下記のとおり,止血シーネ,局所止血剤を併用して対応を行った。
 抗凝固療法(ワーファリン)を受けている患者に対して抜歯術(654321⊥12)を行い,患者の補綴物を改造し,止血シーネおよびコットン型アテロコラーゲンを充填し,そのまま使用とした。結果,良好な止血を得られ,食事摂取するに際し咀嚼機能の維持を得られた。
 なお,本報告の発表について患者本人から同意を得ている。
【考察】
 抗凝固療法を受けている患者では,抜歯前に抗凝固薬の投与量を減らしたり中止したりすることは珍しくない。 しかし,抗凝固剤の減量や中止は,血栓塞栓症などの合併症を引き起こす可能性があり,近年では休薬依頼を断られるケースも多い。一方で多数歯の抜歯をするケースでは食事の際の創部の安静が必要となり,咀嚼(口腔機能)を維持しつつ,止血を達成する必要性が生じる。特に認知症が背景にある場合には義歯を外すことが困難なことも多く補綴物を改修し使用継続する本法が有効であったと考える。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)3例以下の症例報告であり,通常診療の範囲内のため。