[O3-4] 社会的孤立の体重変化や運動量への影響と介入方法の検討
【目的】
他者との交流が減じた状態が続くと体重や筋肉量および食欲関連ホルモンの分泌に影響し,特に高齢者では低栄養や早期死亡の要因となる。高齢者の社会的孤立は高齢化が進む我が国にとって社会問題であるが,各家庭の事情により社会的孤立状態が避けられない場合も多い。そのため社会的孤立状態に対し,外部環境で簡単に介入できる対策が講じられるべきであるが、その検討はまだ十分でない。そこで本研究ではラットで孤立モデルを再現し、孤立状態に対する環境変化が個体に及ぼす影響を基礎的に検討した。
【方法】
7週齢SD系雄性ラットを,2匹で飼育する集団群,1匹の孤立下で飼育する孤立群,1匹の孤立状態と2匹の集団状態を1日おきに繰り返した孤立介入群の3群(n = 4)に分け3週間飼育した。飼育開始日に埋め込み式自発運動量測定装置であるnano tag(KISSEI KOMTEC社)をラットの腹腔内に埋入して飼育期間中の明期・暗期自発運動量を測定した。食餌摂取量と体重は1日おきに計測し,実験開始日を基準とした体重変化率を算出した。さらに,実験開始から21日目に解剖を行い,回収した咬筋,腓腹筋およびヒラメ筋から筋重量体重比を算出した。各項目について3群間の相異の有無を統計的に検討した。
【結果と考察】
明期・暗期の自発活動量は孤立群と比較して孤立介入群で有意に増加した(それぞれp=0.027,p=0.046)。体重変化率は,集団群と比較して孤立群で有意な増加を認めたが(p=0.025),孤立介入群では有意な差は認められなかった。食事摂取量は集団群と比較して孤立群と孤立介入群のいずれも有意に増加していた(それぞれp=0.045,p=0.046)。咬筋の筋重量体重比は、集団群と比較して孤立群で有意に減少した(p=0.019)。本研究より,孤立によるストレスは体重変化率の増加や咬筋の筋重量体重比の減少に影響を与える可能性が示唆された。また,孤立介入群と集団群の体重変化率に有意な差はなかったことから,集団状態を1日おきに繰り返す介入は孤立ストレスによる身体への影響を緩和させる可能性がある。 (COI開示なし)(東京医科歯科大学動物実験委員会承認番号 A2021-292C)
他者との交流が減じた状態が続くと体重や筋肉量および食欲関連ホルモンの分泌に影響し,特に高齢者では低栄養や早期死亡の要因となる。高齢者の社会的孤立は高齢化が進む我が国にとって社会問題であるが,各家庭の事情により社会的孤立状態が避けられない場合も多い。そのため社会的孤立状態に対し,外部環境で簡単に介入できる対策が講じられるべきであるが、その検討はまだ十分でない。そこで本研究ではラットで孤立モデルを再現し、孤立状態に対する環境変化が個体に及ぼす影響を基礎的に検討した。
【方法】
7週齢SD系雄性ラットを,2匹で飼育する集団群,1匹の孤立下で飼育する孤立群,1匹の孤立状態と2匹の集団状態を1日おきに繰り返した孤立介入群の3群(n = 4)に分け3週間飼育した。飼育開始日に埋め込み式自発運動量測定装置であるnano tag(KISSEI KOMTEC社)をラットの腹腔内に埋入して飼育期間中の明期・暗期自発運動量を測定した。食餌摂取量と体重は1日おきに計測し,実験開始日を基準とした体重変化率を算出した。さらに,実験開始から21日目に解剖を行い,回収した咬筋,腓腹筋およびヒラメ筋から筋重量体重比を算出した。各項目について3群間の相異の有無を統計的に検討した。
【結果と考察】
明期・暗期の自発活動量は孤立群と比較して孤立介入群で有意に増加した(それぞれp=0.027,p=0.046)。体重変化率は,集団群と比較して孤立群で有意な増加を認めたが(p=0.025),孤立介入群では有意な差は認められなかった。食事摂取量は集団群と比較して孤立群と孤立介入群のいずれも有意に増加していた(それぞれp=0.045,p=0.046)。咬筋の筋重量体重比は、集団群と比較して孤立群で有意に減少した(p=0.019)。本研究より,孤立によるストレスは体重変化率の増加や咬筋の筋重量体重比の減少に影響を与える可能性が示唆された。また,孤立介入群と集団群の体重変化率に有意な差はなかったことから,集団状態を1日おきに繰り返す介入は孤立ストレスによる身体への影響を緩和させる可能性がある。 (COI開示なし)(東京医科歯科大学動物実験委員会承認番号 A2021-292C)