[P68] M2マクロファージの細胞移植療法はビスホスホネート製剤関連顎骨壊死様病変を治癒・寛解させる
【目的】
ビスホスホネート(BP)製剤関連顎骨壊死(BRONJ)のハイリスク因子であるBP製剤は,高齢者の骨粗鬆症治療やがんの骨転移抑制などに使用されるが,いったん罹患すると高齢者の口腔関連QOLを大きく低下させるものの,その病態は不明で確定的な治療法や予防法はない。一方,免疫細胞のひとつであるマクロファージ(MΦ)は大きく炎症性M1 MΦと組織修復性M2MΦに分類される。本研究の目的は,M2マクロファージの移植がBRONJの病態に与える影響を検索することにある。
【方法】
8週齢の雌性C57BL/6Jマウスを使用した。はじめに,抗がん剤(シクロフォスファミド:CY)とBP製剤(ゾレドロン酸:ZA)の併用投与に抜歯を組み合わせて,高頻度発現型BRONJ様病変モデルマウス(CY/ZA)を作製した。次いで,8週齢の雌性C57BL/6Jマウス長管骨から骨髄細胞を採取し,M-CSF,IL-4,IL-10を用いてM2MΦを樹立した。実験群では抜歯と同時にM2MΦを移植し,対照群には生理食塩水を移植した。全てのマウスは抜歯後2週で屠殺し,上顎,長管骨,脾臓,血清を採取して各種定量解析を行った。
【結果と考察】
長管骨と脾臓の解析では,移植群と対照群に変化を認めなかったことから,M2MΦ移植は全身に影響を与えづらいことが分かった。次いで,M2MΦの移植が病変部硬軟組織に与える影響を検索したところ,移植群は対照群と比較して,ほぼ全群で創部閉鎖・縮小(肉眼的所見)を認めた。また,抜歯部硬組織では,骨量の有意な増大と空の骨小腔数減少に伴う壊死骨の有意な減少に加え,抜歯部軟組織ではコラーゲン産生増大,炎症性細胞浸潤抑制,ならびに血管とリンパ管数の有意な増大を認めたことから,M2MΦの移植は病変部硬軟組織治癒を促進させることが分かった。最後に病変部結合組織内のMΦの極性分布を検索したところ,移植群は対照群と比較してMΦ数が有意に増大し,極性はM2へ有意にシフトしていることが分かった。M2MΦ移植療法を用いた本研究結果は,BRONJの新規治療戦略の基盤構築に大きく貢献できたと考えられた。
(COI開示:なし)
(長崎大学倫理委員会承認番号 2108271741)
ビスホスホネート(BP)製剤関連顎骨壊死(BRONJ)のハイリスク因子であるBP製剤は,高齢者の骨粗鬆症治療やがんの骨転移抑制などに使用されるが,いったん罹患すると高齢者の口腔関連QOLを大きく低下させるものの,その病態は不明で確定的な治療法や予防法はない。一方,免疫細胞のひとつであるマクロファージ(MΦ)は大きく炎症性M1 MΦと組織修復性M2MΦに分類される。本研究の目的は,M2マクロファージの移植がBRONJの病態に与える影響を検索することにある。
【方法】
8週齢の雌性C57BL/6Jマウスを使用した。はじめに,抗がん剤(シクロフォスファミド:CY)とBP製剤(ゾレドロン酸:ZA)の併用投与に抜歯を組み合わせて,高頻度発現型BRONJ様病変モデルマウス(CY/ZA)を作製した。次いで,8週齢の雌性C57BL/6Jマウス長管骨から骨髄細胞を採取し,M-CSF,IL-4,IL-10を用いてM2MΦを樹立した。実験群では抜歯と同時にM2MΦを移植し,対照群には生理食塩水を移植した。全てのマウスは抜歯後2週で屠殺し,上顎,長管骨,脾臓,血清を採取して各種定量解析を行った。
【結果と考察】
長管骨と脾臓の解析では,移植群と対照群に変化を認めなかったことから,M2MΦ移植は全身に影響を与えづらいことが分かった。次いで,M2MΦの移植が病変部硬軟組織に与える影響を検索したところ,移植群は対照群と比較して,ほぼ全群で創部閉鎖・縮小(肉眼的所見)を認めた。また,抜歯部硬組織では,骨量の有意な増大と空の骨小腔数減少に伴う壊死骨の有意な減少に加え,抜歯部軟組織ではコラーゲン産生増大,炎症性細胞浸潤抑制,ならびに血管とリンパ管数の有意な増大を認めたことから,M2MΦの移植は病変部硬軟組織治癒を促進させることが分かった。最後に病変部結合組織内のMΦの極性分布を検索したところ,移植群は対照群と比較してMΦ数が有意に増大し,極性はM2へ有意にシフトしていることが分かった。M2MΦ移植療法を用いた本研究結果は,BRONJの新規治療戦略の基盤構築に大きく貢献できたと考えられた。
(COI開示:なし)
(長崎大学倫理委員会承認番号 2108271741)