[SY7-1] 若手歯科医師が感じる訪問診療のジレンマ
【略歴】
2017年 昭和大学歯学部歯学科卒業
2022年 昭和大学大学院歯学研究科高齢者歯科学修了(歯学博士)
2022年 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座 助教(歯科)
2023年 昭和大学歯学部口腔健康管理学講座口腔機能管理学部門 助教
現在に至る
【受賞】
2021年 第22回日本補綴学会東京支部会 優秀発表賞
2018年 第32回日本老年歯科医学会学術大会課題口演コンペティション優秀賞
【学会】
日本老年歯科医学会 幹事(在宅歯科医療委員会委員会)
【認定医】
日本老年歯科医学会認定医
2017年 昭和大学歯学部歯学科卒業
2022年 昭和大学大学院歯学研究科高齢者歯科学修了(歯学博士)
2022年 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座 助教(歯科)
2023年 昭和大学歯学部口腔健康管理学講座口腔機能管理学部門 助教
現在に至る
【受賞】
2021年 第22回日本補綴学会東京支部会 優秀発表賞
2018年 第32回日本老年歯科医学会学術大会課題口演コンペティション優秀賞
【学会】
日本老年歯科医学会 幹事(在宅歯科医療委員会委員会)
【認定医】
日本老年歯科医学会認定医
【抄録(Abstract)】
自分が研修医時代に高齢者歯科を専門にしようと考えたのは、歯科医院で治療を受けられない高齢患者さんが多くいることを知り、訪問診療によって最後まで口から食べられるようになってほしいと思ったからである。高齢者歯科を専門として5年目になったが、入局した当初は、動揺歯があれば抜歯する、欠損があれば義歯治療を行うことが当たり前だと思っていた。今から思えば口腔の構造をいかに回復するかにとらわれていた。
自分を含め医療においては、何かを改善することを良しとしがちである。しかし、訪問診療においては、必ずしも改善することが正解とならない場合もある。そのことに薄らと気がつきつつも、義歯を入れるという自分の仕事を否定されるような気がしてしまい、歯科医療が手段ではなく目的になってしまうこともあったと思う。
しかし、ある高齢患者さんを診た時に、その考えが誤っていたことを痛感した。その患者さんは多数歯欠損、口腔の運動障害、嚥下障害を有しており、胃瘻で生活されていたが、家族がアイスを食べさせたいと希望していた。上級医の指導のもと摂食嚥下リハビリテーションを開始し、一定の回復が得られたところで義歯を製作した。いったんは改善が認められたが、疾患の進行によって下顎のジストニアが生じ、嚥下リハも義歯装着も中止となった。
嚥下を攻めるべきか、義歯を作るべきか、自分の診療は果たして正解だったのか、今でも悩みは尽きない。医科的には口腔は消化管や気道の入り口であり、誤解を恐れずに言えば、歯科医療も栄養や呼吸を管理するための1つの方策にしか過ぎない。すなわち、訪問診療における在宅医を中心とした多職種連携においては、歯科は(名)脇役で良いのだが、その意味を正しく理解できるようになるには随分と時間がかかった。
訪問診療には歯科だけではどうにもならないことがあることは理解できるが、自分達が行えるのは歯科である。治さなくてもよいと、最近になってようやくそう思えるようにはなった。それでも、今もまだ日々ジレンマに悩みつつ、訪問診療を続けている。
本講演では、そんな一人の若手歯科医師が訪問診療で感じたジレンマとどう向き合ったかを皆さんと共有したい。その上で、訪問診療をより普及させるために、若手歯科医師の皆さんが感じる課題の提示へとつなげられれば幸いである。
自分が研修医時代に高齢者歯科を専門にしようと考えたのは、歯科医院で治療を受けられない高齢患者さんが多くいることを知り、訪問診療によって最後まで口から食べられるようになってほしいと思ったからである。高齢者歯科を専門として5年目になったが、入局した当初は、動揺歯があれば抜歯する、欠損があれば義歯治療を行うことが当たり前だと思っていた。今から思えば口腔の構造をいかに回復するかにとらわれていた。
自分を含め医療においては、何かを改善することを良しとしがちである。しかし、訪問診療においては、必ずしも改善することが正解とならない場合もある。そのことに薄らと気がつきつつも、義歯を入れるという自分の仕事を否定されるような気がしてしまい、歯科医療が手段ではなく目的になってしまうこともあったと思う。
しかし、ある高齢患者さんを診た時に、その考えが誤っていたことを痛感した。その患者さんは多数歯欠損、口腔の運動障害、嚥下障害を有しており、胃瘻で生活されていたが、家族がアイスを食べさせたいと希望していた。上級医の指導のもと摂食嚥下リハビリテーションを開始し、一定の回復が得られたところで義歯を製作した。いったんは改善が認められたが、疾患の進行によって下顎のジストニアが生じ、嚥下リハも義歯装着も中止となった。
嚥下を攻めるべきか、義歯を作るべきか、自分の診療は果たして正解だったのか、今でも悩みは尽きない。医科的には口腔は消化管や気道の入り口であり、誤解を恐れずに言えば、歯科医療も栄養や呼吸を管理するための1つの方策にしか過ぎない。すなわち、訪問診療における在宅医を中心とした多職種連携においては、歯科は(名)脇役で良いのだが、その意味を正しく理解できるようになるには随分と時間がかかった。
訪問診療には歯科だけではどうにもならないことがあることは理解できるが、自分達が行えるのは歯科である。治さなくてもよいと、最近になってようやくそう思えるようにはなった。それでも、今もまだ日々ジレンマに悩みつつ、訪問診療を続けている。
本講演では、そんな一人の若手歯科医師が訪問診療で感じたジレンマとどう向き合ったかを皆さんと共有したい。その上で、訪問診療をより普及させるために、若手歯科医師の皆さんが感じる課題の提示へとつなげられれば幸いである。