[認定P-03] 左側顎関節症の症状から前頭側頭型認知症を疑った一例
【緒言・目的】
近年の超高齢者社会において認知症高齢者は増加しており,歯科医師も認知症の徴候に気づき支援することが求められている。今回顎関節症の疼痛症状の表現から前頭側頭型認知症を疑い,医科の受診に繋げることで,症状のコントロールや食事支援を行った一例を経験したので報告する。
【症例および経過】
80歳女性,顎が痛くてご飯が食べられないと患者の夫から相談され当科を受診。画像検査(シュラ―X―P)で下顎頭の形態に左右差がみられるものの,開口時の運動に問題はみられなかった。臨床所見では開口時に左側の顎関節痛がみられた。口腔内は無歯顎で総義歯を装着していたが,咬合高径が高く着脱時に強い痛みを伴っていた。左側顎関節症,咀嚼筋痛障害と診断し,義歯を外しての安静指示と投薬にて経過観察となった。しかし,疼痛の改善がないことと食事摂取不良に対する不安のため,再度,患者の夫から相談を受けた。診察室では患者との会話が成り立たたず,情動失禁のような様子がみられ,経過から前頭側頭型認知症を疑った。家族は,当初より患者の病状や行動に対する理解に乏しいように見えたが,歯科受診の度に患者の状況を説明することで内科および精神科受診へ繋げることができ,前頭側頭型認知症(HDS−R:9点)の診断に至った。その後,家族の患者へのサポートにより,徐々に疼痛や訴えは改善した。食事摂取の管理については,前頭側頭型認知症の特性から本人の嗜好にできるだけ合わせ,疼痛時は食形態を下げ栄養補助食品で補うなどの指導を行うことで,体重は2.4kgの増加,アルブミン値は2.9から3.3g/d lに改善を認めた。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
一般的に認知症とはアルツハイマー型認知症をイメージすることが多く,それ以外の認知症については認識に乏しいことが多い。歯科医療従事者は認知症に対する幅広い知識をもって患者を観察することで,認知症への気づきを得ることができる。また患者家族の認知症の病識や認知症の対応の理解を深めることで,家族が認知症を受け入れるができ,心理的なケアにも繋がったと考えられる。認知症の方の状態を見極め,過ごしやすい環境作りをサポートすることが,認知症の方への必要な支援であると感じられた症例であった。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)
近年の超高齢者社会において認知症高齢者は増加しており,歯科医師も認知症の徴候に気づき支援することが求められている。今回顎関節症の疼痛症状の表現から前頭側頭型認知症を疑い,医科の受診に繋げることで,症状のコントロールや食事支援を行った一例を経験したので報告する。
【症例および経過】
80歳女性,顎が痛くてご飯が食べられないと患者の夫から相談され当科を受診。画像検査(シュラ―X―P)で下顎頭の形態に左右差がみられるものの,開口時の運動に問題はみられなかった。臨床所見では開口時に左側の顎関節痛がみられた。口腔内は無歯顎で総義歯を装着していたが,咬合高径が高く着脱時に強い痛みを伴っていた。左側顎関節症,咀嚼筋痛障害と診断し,義歯を外しての安静指示と投薬にて経過観察となった。しかし,疼痛の改善がないことと食事摂取不良に対する不安のため,再度,患者の夫から相談を受けた。診察室では患者との会話が成り立たたず,情動失禁のような様子がみられ,経過から前頭側頭型認知症を疑った。家族は,当初より患者の病状や行動に対する理解に乏しいように見えたが,歯科受診の度に患者の状況を説明することで内科および精神科受診へ繋げることができ,前頭側頭型認知症(HDS−R:9点)の診断に至った。その後,家族の患者へのサポートにより,徐々に疼痛や訴えは改善した。食事摂取の管理については,前頭側頭型認知症の特性から本人の嗜好にできるだけ合わせ,疼痛時は食形態を下げ栄養補助食品で補うなどの指導を行うことで,体重は2.4kgの増加,アルブミン値は2.9から3.3g/d lに改善を認めた。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
一般的に認知症とはアルツハイマー型認知症をイメージすることが多く,それ以外の認知症については認識に乏しいことが多い。歯科医療従事者は認知症に対する幅広い知識をもって患者を観察することで,認知症への気づきを得ることができる。また患者家族の認知症の病識や認知症の対応の理解を深めることで,家族が認知症を受け入れるができ,心理的なケアにも繋がったと考えられる。認知症の方の状態を見極め,過ごしやすい環境作りをサポートすることが,認知症の方への必要な支援であると感じられた症例であった。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)