The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

Fri. Jun 28, 2024 2:40 PM - 4:10 PM ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-04] 薬剤関連顎骨壊死を発症した高齢者に対し病変切除および多数歯抜歯後に義歯作製を行い咬合回復を図った症例

○大川内 祥子1、梅本 丈二2 (1. 佐賀市立国民健康保険三瀬診療所、2. 福岡大学病院摂食嚥下センター)

【緒言・目的】
 高齢者において,骨粗鬆症等の疾患に対し骨吸収抑制薬を使用中の患者が歯科受診する機会がある。歯の自然脱落後に薬関連顎骨壊死(medication-related osteonecrosis of the jaw: MRONJ)を発症した患者に対して,大学病院との連携により病変の切除および多数歯抜歯後に義歯作製を行い良好な経過を得た症例について報告する。
【症例および経過】
 79歳,女性。┌5自然脱落,義歯不適合を主訴に受診。┌5は初診1週間前に脱落したとのことであった。栄養状態は良好(BMI:19.7kg/m2),既往歴に骨粗鬆症がありビスフォスフォネート(BP)製剤を長期内服していたが,脱落部粘膜はすでに上皮化しており明らかな感染所見は認めなかったため経過観察とした。約2ヶ月後に瘻孔形成し排膿を認めたため画像撮影を行ったところ┌5部周囲の骨吸収像と骨硬化像を認めた。処方医に確認後にBP内服を中止し, 2021年6月佐賀大学医学部附属病院歯科口腔外科(佐大歯科口腔外科)を紹介受診。MRONJ(Stage 2)の診断となり,腐骨分離を待って病変切除予定となった。残存歯が全て重度歯周炎に罹患しており抜歯適応であったため,待機期間中に佐大口腔外科外来にて抜歯,閉鎖創とし,同時並行で当院にて即時義歯を作製し咬合回復を行い,2023年5月全身麻酔下左側下顎骨辺縁切除術を施行した。退院後,左側下顎顎堤の陥凹を認めたため,新義歯作製した。現在までにMRONJの再発,および抜歯部の感染を疑う所見は認めていない。義歯を使用して問題なく食事もできており経過良好である。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 近年,高齢者においてBP使用歴のある患者が歯科受診する機会が増加しており,抜歯等の観血的処置前に使用の確認を行うことがMRONJ発症予防として重要である。本症例は,重度歯周炎による歯の自然脱落後,周囲に細菌感染した組織が残存していたことがMRONJの原因となった可能性が考えられた。大学病院歯科口腔外科との連携により病変の根治的加療が実施され,義歯による咬合の改善が認められたが,高齢者において,歯の自然脱落は歯周炎が原因である可能性が高いため,必要に応じて周囲感染組織の掻爬を行うことも考慮するべきであると考えられた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)