一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2024年6月28日(金) 14:40 〜 16:10 ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-09] 歯性感染症から継発した脳膿瘍の患者に対して入院中に原因除去を行い補綴処置により咬合の改善を施した1例

○河内 奈穂子1、鎌田 政善2 (1. 黒沢病院附属ヘルスパーククリニック 歯科口腔外科、2. とちはら歯科)

【緒言・目的】頭蓋内膿瘍である脳膿瘍は,歯性感染や副鼻腔炎等の直接連続性感染,循環器系疾患,呼吸器感染症などからの血行性感染が原因となるといわれている。今回の症例は,歯科受診が困難で口腔内の環境が悪い患者の脳膿瘍の原因となる歯性感染症の原因除去と口腔機能の回復が目的である。患者は要介護1で自宅介護という背景から,退院後も歯科受診が困難となることが予想されることに配慮し,入院中に原因除去と口腔内環境の改善が必要と判断し治療を行った。頭蓋内膿瘍である脳膿瘍は,副鼻腔炎や中耳炎等の耳鼻科領域の直接連続性感染や感染性心内膜炎などの循環器系疾患,呼吸器感染症などからの血行性感染等が原因となるが,歯性感染が原因となることはまれといわれている。今回われわれは,歯性感染症が原因と考えられる脳膿瘍を経験したのでその臨床的概要を報告する。【症例および経過】76歳男性,歩行困難,視野障害あり当院脳神経外科受診。入院翌日に撮影した造影CTにて膿瘍確認,抗生剤治療が開始された。その後発熱継続し,膿瘍の増大が認められたため,穿頭膿瘍摘出術が実施された。細菌培養検査にてα-streptococcusが同定され,他の感染源がないことから歯性感染症から続発した脳膿瘍の疑いにて当科紹介となった。歯科初診時,口腔内確認したところ,上下顎ともに周囲歯肉の腫脹を伴う数本の残根歯が認められた。エックス線写真にて根尖には病巣を有している歯牙も認められた。脳神経外科主治医の許可のもと,数回に分けて原因となりうる歯牙を抜去し,欠損部に対して義歯の作製を行った。その後,膿瘍の再発もなく入院から48日経過後に回復期リハビリテーション病院へ転院となった。なお,本報告の発表について患者本人死亡のためご家族から文書による同意を得ている。【考察】今回の症例は,歯性感染症が原因となった脳膿瘍の症例であり,原因となる病巣の除去および入院中に口腔内環境および咬合の改善ができた1例である。自宅介護されている高齢者は歯科受診が困難な場合が多く,口腔内環境が悪化しやすい。入院中に歯科が介入することにより,原因治療だけでなく口腔内環境の改善およびその後の治療につなぐことが必要であると考える。(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)