一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2024年6月28日(金) 14:40 〜 16:10 ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-21] 長期歯科未受診の高齢者に対し,周術期口腔機能管理により,咀嚼機能の改善がみられた症例

○桐石 祥果1、柏崎 晴彦1 (1. 九州大学病院 高齢者歯科・全身管理歯科)

【緒言・目的】
 周術期における口腔機能管理では,気管内挿管時の歯の損傷や術後の肺炎など,合併症リスクを減少させるとともに,口腔機能を改善させることも重要である。今回,超重症大動脈弁狭窄症に対しての手術における周術期口腔機能管理を機に歯科を受診した,咀嚼機能障害の高齢患者に対し,感染性心内膜炎予防に考慮した抜歯および義歯製作を行い,咀嚼機能の改善がみられた症例を経験したので報告する。

【症例および経過】
 65歳、女性。HTLV-1抗体陽性,バセドウ病の既往あり。2023年8月,当院循環器内科より超重症大動脈弁狭窄症に対する手術における口腔機能管理の依頼があり,当科を受診した。歯科治療恐怖症のため,長期間歯科受診が途絶えており,残存歯8本(54321┬34,└5)のうち2本は残根状態であった。義歯の使用はなく,魚やうどんなどの軟らかいものを摂取していた。初診時のグルコセンサーを用いた咀嚼機能検査では83mg/dLであった。口腔内感染源となる歯の抜歯および義歯製作による咀嚼機能の回復を図ることとした。同年9月医科主治医に対診後,感染性心内膜炎予防として,アモキシシリン2gを内服後,アドレナリン0.0075mg含有の局所麻酔薬を使用して該当歯(5421┬4・└5)の抜歯を行った。11月に上顎全部床義歯および下顎部分床義歯を装着した。義歯装着1か月後の咀嚼機能検査では112mg/dL,デンタルプレスケールを用いた咬合力検査では259.7Nであった。また,たくあんやせんべいが食べられるようになり,咀嚼機能の改善が認められた。さらには,気管内挿管時の歯の損傷を予防するためにマウスプロテクターの製作を行い,術前術後の口腔ケアを実施した。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【考察】
 本症例では,歯科治療恐怖症のために歯科受診が途絶えていた患者に対し,周術期管理を機に,歯科治療が開始された。患者本人による口腔内環境の改善の希望もあったため,義歯の装着に関して積極的であったことが,結果として咀嚼機能の改善につながったと考えられる。本症例を通して,周術期口腔機能管理は,術後の合併症の予防や入院日数の短縮を目指すだけでなく,歯科受診を再開させる一つの機会となったと考えられる。

(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)