一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2024年6月28日(金) 14:40 〜 16:10 ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-26] 進行性核上性麻痺によるADLおよび嚥下機能低下に対応し機能維持を図った症例

○吉﨑 怜子1、中根 綾子1 (1. 東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション)

【緒言・目的】
 進行性核上性麻痺(PSP)は進行すると嚥下障害の頻度が高く,死因は肺炎が最多を占める。今回PSP患者に対してADL及び嚥下機能低下に対応し,誤嚥性肺炎に至らず長期にわたり機能維持できている1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 69歳男性。初診時ADLは障害高齢者の日常生活自立度ランクA1,BMI21,発話明瞭度2~3,欠損歯なく清掃状態良好で挺舌は口唇まで可,舌運動制限や嚥下反射惹起遅延はあるがVEにて咽頭残留や誤嚥なく常食の食事形態を摂取していた。患者と家族より,できる限り家族と同じ物を食べたいと希望があった。そのため食事形態を一口サイズにし,足底をつけ姿勢保持が安定するよう指導した。発話不明瞭に対し,ST介入による構音訓練を勧めた。2022年7月歯周病により動揺歯(左下6番)が出現。抜歯後にBrにし,咀嚼しやすくなり食事時間が60分から40~50分へ短縮した。この時点で舌圧20kPa。2023年1月より睡眠障害が出現し食事がとれない事が増えた。これに対して睡眠時間過多時は栄養補助食品や経口補水液の利用を促し,BMI維持のため中鎖脂肪酸油を勧めた。また食事時後半に食具を口元まで運ぶ所作に易疲労感が増し,食事時の環境調整について指導した。同年10月訪問時揚げ物の衣や麺類でむせると訴えがありVEにて喉頭蓋谷に残留を認め喉頭侵入が推測され,食事形態と代償法を指導した。STとリハ継続し舌圧19kPaで維持。経時的に姿勢や食形態,食具や栄養摂取方法を指導し誤嚥性肺炎に至らずBMI20を維持している。
 なお本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 PSPは早期から嚥下障害をきたす。初期は偽性球麻痺でも進行すると球麻痺を伴い重篤となる場合があり,治療の中心は摂食方法や体位,食形態の調整となる。本症例は進行状態が比較的緩徐なため,食具の工夫や姿勢調整により誤嚥性肺炎に至らず経過している。またPSPの特徴には食塊形成不全や口腔通過時間の遅延がある。咀嚼は嚥下を容易にするための食塊形成を行う上で重要で,食塊形成不十分な際には誤嚥や窒息リスクが高い。本症例では動揺歯を早期に解決し咀嚼機能低下の一要因を除外できた。今後疾患の進行が予測され,症状に合わせた嚥下機能の評価とそれに対する対応が必要である。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)