一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

2024年6月28日(金) 14:40 〜 16:10 ポスター会場 (大ホールC)

[摂食審査P-03] 脳血管障害後遺症による嚥下障害患者に対し多職種連携により経口摂取可能となった症例

○森豊 理英子1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言・目的】
 脳血管障害後遺症による嚥下障害にて,胃瘻で栄養管理されていた患者に対し,多職種連携し,口腔管理と定期的な嚥下機能評価を行った結果,1日2食経口摂取可能となったので報告する。
【症例および経過】
 70歳,女性。夫と二人暮らし。既往は上咽頭癌(放射線化学療法施行,20歳)。2020年11月右放線冠ラクナ梗塞を発症し入院,経口摂取困難となり胃瘻造設した。翌年5月退院後,同年9月経口摂取は禁止されていたが,自己判断で果物などを少量経口摂取していた。経口摂取再開に関し,主治医より嚥下機能評価依頼を受けた。当科初診時,内服薬は,シロスタゾール100mgOD錠,他。BMI18.7kg/m2,Alb2.9g/dl。左片麻痺はあるが,自己摂取可能,口腔衛生状態は不良で,治療途中の歯が複数あり,咬合不良を認めた。嚥下内視鏡検査では,発声時の鼻咽腔閉鎖の減弱を認め,バナナやパンは咀嚼に時間を要した。また,食塊移送が困難であり,咽頭収縮の減弱,嚥下後の咽頭残留,水分は少量の顕性誤嚥を認めた。以上より,短期的な目標は,1日1食の経口摂取の確立とし,長期的には安全に経口摂取量を増やしていくこととした。目標達成のため,食事環境を整えることから開始し,長期的には食事指導,口腔および栄養管理を行うこととした。まず, STと訪問看護師が立ち会う日に限定した経口摂取を指示し,以後,訪問を重ね,食形態の調整,姿勢調整など段階的に指導した。かかりつけ歯科医には,口腔衛生管理,義歯治療による咀嚼機能回復を依頼した。多職種で介入を継続した結果,2024年1月,夫とケアマネジャーと相談し,介護負担を配慮し,1日1食を胃瘻,2食を常食の経口摂取へと移行でき,BMIは維持,Albは3.4g/dlと改善した。本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 一側性大脳病変による咽頭期障害は軽症との報告はあるが,本症例は,禁食による廃用,咬合不良,上咽頭癌の既往が重なったことから嚥下障害は重度になったと考える。適切な嚥下機能評価や食事指導を指導し,経口摂取が可能となった。また,早期から口腔管理を行ったことで,誤嚥性肺炎発症に至っていない。本人と夫の希望を尊重し,高齢世帯の介護環境に配慮し,自ら連携の中心となり,有益な生活期の摂食嚥下リハビリテーションが行えた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)