The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

一般演題(口演発表)

一般演題(口演) » [一般口演1] 口腔機能

一般口演1
口腔機能

Sat. Jun 29, 2024 8:50 AM - 10:10 AM 第4会場 (107+108会議室)

座長:伊藤 智加(日本大学歯学部歯科補綴学第1講座)、堀 一浩(新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野)

[O1-8] 服薬数と口腔機能に関する観察研究

○西村 佳央理1、荻野 洋一郎1 (1. 九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座クラウンブリッジ補綴学分野)

【目的】
 高齢者では,加齢だけでなく全身疾患や服薬に関連した口腔機能低下が示唆されてきた。中でも服薬や多剤服用などの影響による唾液分泌低下等の有害事象が一般的に言われており,患者の治療において実感することがあるものの口腔機能低下症の診断法に基づいた検証は不足している。そこで本研究では,服薬数の違いが口腔機能に与える影響について調査することを目的とした。
【方法】
 対象は,2020年4月1日から2023年5月31日までに九州大学病院補綴科で補綴治療後のメインテナンスで来院し,口腔機能低下症診断に用いられる口腔機能検査を行った患者とした。
診療情報記録より患者プロファイル(年齢・残存歯数・咬合支持数・オクルーザルユニット)・服薬情報(服薬数・服薬内容)・口腔機能検査値(口腔粘膜湿潤度・最大咬合力・舌口唇運動機能:以下ODK(パ・タ・カ)・最大舌圧・咀嚼能力・EAT10)を抽出した。
 対象患者を服薬数に応じて非服用群,服用群(1~5剤),多剤服用群(6剤以上)の3群に分類し,残存歯数および口腔機能検査値の群間比較(Kruskal-Wallis検定・Steel-Dwass検定)を行った。
【結果と考察】 
 研究対象者は172名(男性66名,女性106名,70歳未満67名,70歳以上105名,中央値71.00歳,四分位範囲64.25-77.00歳)。対象者が服用していた薬剤は以下の通りである。
服用薬の種類:血圧降下剤・消化性潰瘍剤/健胃消化剤/制酸剤・高脂血症用剤・抗うつ剤・糖尿病用薬・骨代謝疾患用剤・鎮痛剤・血液凝固/血小板凝集阻止剤・アレルギー用薬・痛風治療剤・ホルモン剤/抗ホルモン剤・ステロイド・利尿剤
 3群間で比較を行ったところ全体および女性では残存歯数・ODK(パ・タ・カ)において非服用群と多剤服用群間で有意差を認めた。本研究では,薬剤服用患者で一般的に言われている口腔乾燥への影響は認められなかったが,ODK(パ・タ・カ)の低下が示された。これは,服用薬剤が脳神経・口腔周囲筋の機能低下に関連することで舌口唇運動機能低下が引き起こされている可能性が考えられた。治療前後の口腔機能の確認においては歯科治療だけでなく,薬剤の関与も踏まえた包括的なアプローチを考慮する必要性が示唆された。
(COI 開示:なし)(九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会 許可番号:23147-00)