The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

一般演題(口演) » [一般口演1] 口腔機能

一般口演1
口腔機能

Sat. Jun 29, 2024 8:50 AM - 10:10 AM 第4会場 (107+108会議室)

座長:伊藤 智加(日本大学歯学部歯科補綴学第1講座)、堀 一浩(新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野)

[O1-7] 新たに開発した簡便なボイストレーニングの摂食嚥下機能改善効果に関する研究

○長谷川 翔平1、長澤 祐季1、吉見 佳那子1、中川 量晴1、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
 発声には口腔運動や呼吸が密接に関与し,先行研究ではボイストレーニング等を専門家による密な指導の下に実施した結果,嚥下機能改善効果を得られたという報告がある.しかし,簡便に短時間で実施できるボイストレーニングの効果について調査した報告はこれまでにない.本研究では, 新たに開発したボイストレーニングが摂食嚥下機能,口腔周囲筋の筋力および巧緻性を同時に改善させるか調査した.
【方法】
 対象者は当科外来を受診した20歳以上の嚥下障害患者のうち研究参加の同意を得た者とし,進行性の疾患を有する者,指示従命が困難な者は除外した.歌唱の専門家と共に開発した歌の各要素(構音する,音程を変える,ニュアンスをつける)をそれぞれ行うボイストレーニングを外来にて指導し,1日5分間程度2か月間実施するよう指示した.介入前後で口唇閉鎖力,舌圧,オーラルディアドコキネシス(/pa/,/ta/,/ka/,以下ODK)を計測した.嚥下造影検査より,薄いとろみ5ccを摂取した際の誤嚥・喉頭侵入の程度(penetration-aspiration scale,以下PAS),咽頭残留の程度(Bolus Residue Scale,以下BRS)を評価した.介入効果検証のため,介入前後のデータを比較し統計学的に解析した(有意水準5%).
【結果と考察】
 対象者は5名(男性5名,平均年齢73±7歳)であった.訓練前後で口唇閉鎖力(訓練前12.0±6.0N,訓練後13.6±17.2N,p=0.034),およびODK/pa/(訓練前3.9±2.5回/秒,訓練後5.1±1.6回/秒,p=0.049),ODK/ta/(訓練前5.1±1.6回/秒,訓練後5.6±1.5回/秒,p=0.009)が有意に改善した.舌圧は改善傾向(訓練前29.3±15.6kPa,訓練後32.3±17.0kPa,p=0.053)であった.PASおよびBRSは, 介入前のスコアが1(喉頭侵入・誤嚥または咽頭残留なし)であった2名を除く3名のうち,2名が改善した.本研究の結果から,短時間の簡単なボイストレーニングを実施するだけでも口腔周囲筋の筋力,巧緻性,嚥下機能が改善し得る可能性が示唆された.
(COI開示:なし)
(東京医科歯科大学 倫理審査委員会承認番号D2021-060)