[O1-6] 高齢者閉塞時睡眠時無呼吸に対する口腔内装置の有効性の検討
【目的】 高齢者の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の有病率は30~80%と高い一方、いびきや無呼吸、日中の眠気などの自覚症状が乏しいことが多く、多くが未治療のままになっていることが問題視されている。夜間の頻尿、認知症、抑うつ、ドライマウス(口腔乾燥症)といった高齢者に特有の症状だけでなく、脳心血管疾患の発症率とも関連し、QOL低下につながるため、早期の診断のための検査及び治療は不可欠と考える。【方法】 2015年1月〜2023年12月に当科にて医科よりOSA治療のため口腔内装置(OA)作製の紹介を受けた369名のうち、65歳以上の高齢者34名(男性19名、女性15名、平均年齢71.0±4.8歳)においてOA治療の有効性を検討した。OA治療の有効性の評価については、無呼吸低呼吸指数(AHI)/呼吸イベント指数(REI)に対し、減少率50%以上もしくは10以下を著効、減少率0〜50%を有効、減少なしを無効とした。統計解析はRのGUIであるEZRを用いた。【結果と考察】 OA治療によるAHI/REI改善について、著効25名・有効3名・無効5名(有効以上85.3% p=0.0431)であり、高齢者においてOAによる高いOSA改善効果が示された。うちAHI/REI≧30の重症OSAの改善率は72.1%であった。エプワース眠気尺度(ESS)についても減少率61.1%(p<0.001)を示し、ESS≧11を示す日中の強い眠気を示す者については改善率54.5%(p<0.001)であった。OSA治療の第一選択はCPAPと考えられるが、持続陽圧呼吸療法(CPAP)が抱えるアドヒアランスの低さの問題は高齢者においても同様である。OA治療の利点は装置自体や取り扱いが簡便であること、高いアドヒアランスが挙げられる。しかし欠点としてCPAPと比べ、改善効果が劣る、健康保険制度において定期管理の制約がない、作製を担当する歯科医師の技量に左右されるなど問題点も多い。また多くの高齢者は、夜間に口腔内装置を装着して就寝する習慣もないことから、異物感が不眠症状を悪化することも懸念される。多数の未治療者への睡眠時無呼吸の治療の必要性の認識と合わせて、CPAP同様にモニタリング出来る装置の開発や口腔内装置の定期管理の必要性が求められる。(COI 開示:なし)(黒沢病院倫理審査委員会承認番号2024-02-1)