一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演4
加齢変化・基礎研究

2024年6月29日(土) 14:20 〜 15:20 第4会場 (107+108会議室)

座長:濵 洋平(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野)、田中 信和(大阪大学歯学部顎口腔機能治療部)

[O4-5] 口腔湿潤計ムラタムーカス®測定値に影響を与える要因の分析

岩渕 博史1、○家邉 徹2、大内 友貴2 (1. 国際医療福祉大学病院歯科口腔外科、2. 株式会社村田製作所)

【目的】
 口腔湿潤計ムラタムーカス®は2022年6月に先行品の口腔水分計ムーカス® (株式会社ライフ社)に対しベンチテストで同等性を示し後発医療機器として承認を得た。先行品は肌水分計の原理を基に製品化されたが、肌では皮膚内に電気力線を通して静電容量を測定しているのに対し、舌は舌乳頭があり表面が唾液で濡れており、舌表面の性状と唾液が影響を与えている事が推察される。そこで、有限要素法での電気的な解析を行い、その結果の検証のため、舌の表面および内部状態を模擬した実証実験を実施した。
【方法】
 有限要素法では微小突起のある舌に樹脂カバーを介して櫛歯電極型センサを接触させたモデルを構築し、電気力線の状態と静電容量変化を解析した。また、この実証のため、株式会社村田製作所で細胞分画用に製品化している金属フィルタCELLNETTA®の異なるメッシュサイズ品(100/40/5um)を舌上の唾液と空隙に見立てスポンジ上に配置し、樹脂フィルムを介しセンサを接触させ測定した。さらに、舌内部の水分量変化がムーカス値に与える影響を調べるため、先行研究に基づきブタ舌を加熱してMRIの緩和時間で水分量を評価した上で、加熱あり/なしの2水準にて、スポンジでの舌表面ふき取り後と、生理食塩水噴霧後に口腔湿潤計とMRIで評価した。
【結果と考察】
 いずれも電気力線は舌内部まで侵入せず、表面を唾液が覆っている状態では減衰し表層に留まり、覆われていない状態では舌突起間の空隙まで侵入した。空隙部位を振った解析では面積に依存して静電容量が変化した。この結果より、口腔乾燥患者の舌では濡れた部位と乾いた部位が混在し、それらで減衰に差があり、乾いた部位(空隙部位)の面積がムーカス測定値に寄与する静電容量変化を起こしていると考えられた。実証実験の結果、解析結果と同様に空隙面積が多いと静電容量が低下し、解析通り舌表面の乾燥状態により変化することが明らかとなった。MRI評価では、加熱後にはブタ舌全体の水分低下が確認でき、加熱の有無によらず生理食塩水噴霧後のムーカス測定値、緩和時間に差はなく、ブタ舌内部の水分量の変化は影響を与えないことが確認できた。本研究は口腔湿潤計による舌の湿潤状態の測定値の妥当性を示すものと考えられた。
( COI 開示:株式会社村田製作所)
(倫理審査対象外)