一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演6
症例・施設1

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 第4会場 (107+108会議室)

座長:潮田 高志(東京都立多摩北部医療センター歯科口腔外科)、高橋 賢晃(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

[O6-4] 歯肉癌を疑い、訪問医より当科を紹介された施設入所中の高齢患者2例

○齊藤 美香1、佐藤 はるか1、大沢 啓1、森 美由紀1、平野 浩彦1、大鶴 洋1,2 (1. 東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科、2. 東京都)

<緒言・目的>
 今回われわれは、歯肉癌を疑い、訪問医より当科を紹介された施設入所中の高齢患者2例を経験したので、その概要を報告する。
<症例および経過>
 症例1 
 患者:88歳、女性
 主訴:左側下顎歯肉腫脹。
 現病歴:20XX-4年Y-1月中旬頃、左側下顎第2小臼歯頬側歯肉に表面不整な腫瘤状変化を認めた。歯肉癌の疑いで当科を紹介され、Y月中旬に受診した。
 既往歴:高血圧、うっ血性心不全、右側大転子骨折
 初診時現症:
 全身所見;自立歩行可能、意識清明、亀背
 口腔内所見;左側下顎第1、第2小臼歯頬側歯肉に表面不整、弾性硬の腫瘤あり
 臨床診断:左側下顎歯肉腫瘍もしくは化膿性炎の疑い
 治療経過:第1病日に細胞診を実施、結果は「陰性」「反応性病変」であった。第7病日、組織診を実施したが、消炎後の再検査を提案された。抗生剤投与後、腫瘤は徐々に縮小した。第64病日、左側下顎第2小臼歯の咬合時痛を認めた。第112病日、左側下顎第2小臼歯抜歯、歯肉腫瘤切除を行った。病理結果は「炎症性肉芽組織」であった。
 症例2
 患者:87歳、女性
 主訴:右側下顎歯肉腫瘤、出血
 現病歴:20XX-2年Y-1月中旬頃、右側下顎第1、第2小臼歯歯肉腫瘤、出血を認め、下旬には腫瘤が増大した。歯肉癌の疑いで当科を紹介され、20XX-1年Y月初旬に受診した。
 既往歴:狭心症、右側足骨折後、廃用症候群、骨粗鬆症(ミノドロン酸水和物内服中)、認知症
 初診時現症:
 全身所見;車椅子移動、傾眠傾向
 口腔内所見;右側下顎小臼歯歯肉に、頬舌的に発赤を伴う腫脹あり
 臨床診断:右側下顎歯肉腫瘍もしくは薬剤関連顎骨壊死の疑い
 治療経過:第1病日にCT撮影を実施、右側下顎小臼歯根周囲歯槽骨が下顎骨と分離していた。抗生剤処方後、第11病日、腫瘤は縮小した。組織診を実施、結果は「炎症性肉芽組織」であった。第35病日、右側下顎第2小臼歯抜歯、腐骨除去術を行った。病理結果は「炎症性肉芽組織」「腐骨」であった。
 なお、発表に際し患者家族に文書で同意を得ている。
<考察>
 訪問医から当科への紹介は「抜歯」や「粘膜疾患」の診察依頼が多い。今回は結果的に癌ではなかったが、癌が発覚する例もあり得る。今後も訪問医の依頼に対し、可能な限り迅速に対応することが望ましい。
COI開示:なし
倫理審査:対象外