The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

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一般口演6
症例・施設1

Sun. Jun 30, 2024 10:40 AM - 11:40 AM 第4会場 (107+108会議室)

座長:潮田 高志(東京都立多摩北部医療センター歯科口腔外科)、高橋 賢晃(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

[O6-5] 頭部振戦を伴う後期高齢者に認められた下顎大臼歯舌側に穿孔した根管治療器具異物の1例

○原田 祥二1,2、藤田 真理3、菅野 真人4、浮田 万由美5、江端 正祐6、岩崎 正則2、山崎 裕7 (1. 原田歯科、2. 北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野予防歯科学教室、3. 北海道医療大学歯学部口腔生物学系微生物学分野、4. 太田歯科医院、5. 小樽市保健所、6. えばた歯科、7. 北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野高齢者歯科学教室)

【緒言・目的】
 頭部振戦を伴う後期高齢者において、下顎左側第2大臼歯(以下、左下7)を抜歯した際に、抜去歯の遠心根舌側面に穿孔して残留している根管治療器具を認めた1例を経験したのでその概要を報告する。
【症例および経過】
患者:80歳女性。
再初診:令和5年2月。
既往歴:骨粗鬆症、不整脈、高血圧症、脂質異常症、腰部脊柱管狭窄症、不眠症、便秘症。
主訴:下顎左側臼歯部の違和感。
現病歴:平成14年9月初診。平成26年以降は他院を受診し左下ブリッジを除去して左下7を鋳造冠にて補綴した。その際強い痛みを自覚したかどうかよく覚えていない。その後、同部に違和感を自覚するようになった。今回、通院中の整形外科より骨粗鬆症の治療を始める前に歯科受診を勧められ、9年ぶりに当科を受診した。
現症:
口腔外所見;頭部振戦。声の震え。
口腔内所見;左下7動揺なし、違和感あり。
レントゲン写真所見;左下7遠心根根尖部に根管充填剤様の逸出と透過像あり。
臨床診断:#1 左下7根尖性歯周炎。#2 同根管充填材根尖外逸出の疑い。
処置及び経過:再初診時以降口腔の健康管理に努めた。左下7は抜歯適応と判断して同年7月に抜歯した。抜歯は抜歯鉗子を用い、抜歯中も振戦は続き抜歯操作に強固に抵抗した。抜歯直後、抜去歯遠心根舌側面に歯軸に対して45度下方に向いて2mm程度突出した根管治療器具を認めた。舌側の歯槽骨は分岐部相当まで水平に吸収されており、少量の不良肉芽が存在していた。舌側歯槽部に微小な瘻孔も認められた。抜歯窩を掻爬して1糸縫合し処置を終えた。抜歯後は良好に経過し上皮化が得られた。
 本報告の発表について患者から文書による同意を得ている。
【考察】
 頭部振戦は初診の時点で既に認められていた。ほぼ正面から左側の範囲で比較的ゆっくり水平に動く軽度のものであり日常生活には支障がなかった。若いときに交通事故で頭部を受傷してから頭が勝手に左に動くようになったとのことだったが詳細は不明である。その後、振戦は緩徐に増悪したと思われる。根管治療器具の残留については、頭部振戦の状態で根管治療器具を使用したため、舌側傾斜の強い萌出方向と相まって穿孔、破折しその状態のまま歯冠補綴したと考えられた。根管治療器具はその形状からエンジンリーマー#35と推測された。頭部振戦を伴う高齢者では細心の治療態度が必要である。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)