The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

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一般口演6
症例・施設1

Sun. Jun 30, 2024 10:40 AM - 11:40 AM 第4会場 (107+108会議室)

座長:潮田 高志(東京都立多摩北部医療センター歯科口腔外科)、高橋 賢晃(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

[O6-6] 舌癌術後の経口摂取不良によりうつ病を発症した高齢者において口腔機能管理を行いうつ病改善につなげた症例

○塚本 葉子1,2、水谷 慎介2,3、柏崎 晴彦2 (1. 九州大学病院医療技術部歯科衛生室、2. 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学・全身管理歯科学分野、3. 九州大学大学院歯学研究院附属OBT研究センター)

【緒言・目的】
 口腔癌では、手術や放射線化学療法により、器質的な欠損や口腔粘膜炎が生じ、QOLが著しく低下することがある。今回、舌癌術後の放射線治療による口腔粘膜炎等が一因となり、うつ病を発症した患者において、口腔粘膜炎に対する対応および口腔機能向上のための介入を行い、それらがうつ病改善の一助となったと考えられる症例を経験したので報告する。
【症例および経過】 
 74歳、女性。左側舌扁平上皮癌(cT2N0M0)、左側舌部分切除術後、気分変調症、子宮筋腫・子宮摘出後の既往あり。2023年1月に紹介元大学病院口腔外科より、当院放射線科に舌癌部分切除後の放射線化学療法依頼で受診した。上下顎無歯顎、義歯不使用であり、食事は軟飯軟菜が中心であった。同年2月からCDDP併用RT(60Gy/30Fr)が開始された。day7頃から味覚障害および口腔粘膜炎が出現したため、44Gy照射時点で当科に口腔管理依頼があった。当科初診時の口腔粘膜炎はGrade 3、主食0割であり、経口摂取不良であった。キシロカイン含有含嗽や口腔粘膜保護剤の使用を中心とした口腔衛生管理を行った。その後、口腔粘膜炎を主因とするうつ病と診断され、精神科病棟に転科となったが、歯科の介入は継続した。放射線治療終了後約1か月後に口腔粘膜炎は消失したため、上下顎総義歯の製作を行ったが、完成直後に両側リンパ節転移の診断となり、それを受けてうつ病の悪化が認められ、義歯の使用に至らなかった。7月の頚部郭清術後も、口腔管理目的に精神科病棟での診察を継続したところ、8月下旬に患者より義歯の使用希望があり、義歯の使用を再開した。また、舌圧が5.3kPaであったため、舌挙上訓練を中心とした介入を開始した。介入開始2週後には、舌圧は16.5kPaまで改善し、きざみ食を問題なく摂取できるようになった。その後、うつ病が改善したため、転院となった。なお,本報告の発表について患者本人から口頭による同意を得ている。
【考察】 
 口腔粘膜炎への対応および口腔機能向上のための介入を行うことにより、経口摂取状況を改善できた。患者はもともと食事が趣味であったため、経口摂取ができないことがうつ病発症要因と考えられたが、経口摂取できるものが徐々に増えたことで、患者のうつ傾向が改善する一助となったと考えた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)