一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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介護・介護予防(質疑応答)

2024年6月29日(土) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-01] 当センターの居宅療養管理指導における歯科衛生士の取り組み

○小川 沙知1、会沢 咲子1、蛯谷 明希1、鯉沼 哉2、高田 靖2 (1. 豊島区歯科医師会口腔保健センターあぜりあ歯科診療所、2. 公益社団法人東京都豊島区歯科医師会)

【目的】
 超高齢化が加速する令和の昨今、要介護者への口腔機能管理の重要性が更に高まっている。
 介護保険制度が開始された平成12年より、豊島区口腔保健センターあぜりあ歯科診療所では歯科衛生士による居宅療養管理指導を実施している。平成12年度から令和4年度までの居宅療養管理指導の実施状況をまとめ、歯科衛生士の役割について今後の展望と課題を考察したので報告する。
【方法】
 平成12年度から令和4年度までの22年間に行った居宅療養管理指導の実人数および訪問回数、介護度などを集計し変化を比較調査した。なお、データ集計に際しては連結不可能匿名化して行った。
【結果と考察】
 平成12年度の居宅療養管理指導実人数は15名・訪問回数180回、令和4年度は実人数279名・訪問回数2385回であった。コロナ禍では、介護職や利用者家族から利用者が感染するケースや、濃厚接触疑いの理由でキャンセルするケースも相次ぎ訪問件数の減少があった。
 訪問診療は担当ケアマネや多職種からの依頼が多く、主訴は義歯に関する不具合が目立つが摂食嚥下機能の評価が増加傾向にある。
 診療終了後も歯科衛生士による居宅療養管理指導の継続希望が多く、利用者家族や多職種からの口腔機能維持・向上への関心の高まりが伺える。重症化予防のためには、介護者への口腔衛生・口腔機能訓練・摂食等の指導を行うことが重要であり、歯科衛生士はこれらの知識・見識を深め、各利用者に合わせた適切な助言をすることで、より地域の信頼を得られるものと考える。
 管理栄養士と連携した症例もあり、あぜりあ歯科では今後栄養ケアステーションの役割を担うビジョンもある。管理栄養士から栄養面の知識を得る機会、それを訪問現場で活かす機会も今後増加していくと思われる。
 利用者との継続的な関係構築のためには、利用者の全身疾患・精神状態の他、利用者の生活背景なども考慮し、地域の多職種と顔の見える関係やICTによる活用で情報共有のうえ積極的に築くこと、利用者のニーズを敏感に察知していくことは今後も必須であると考える。
 また増加していく老々介護家庭や独居高齢者家庭への対応力向上も喫緊の課題である。歯科衛生士の役割は、今後もますます多岐に渡ると思われ、医療・社会などの情報を積極的に吸収しつつ、口腔衛生・口腔機能維持を訴えていく手段を再考していきたい。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)