一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 介護・介護予防

介護・介護予防(質疑応答)

2024年6月29日(土) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-04] 咽頭吸引処置の補助を目的とした口腔内装置の作製により家族が直接訓練をおこなえるようになった1例

○並木 千鶴1,2,4、原 豪志1,2,3、川勝 優悟4、小林 健一郎2、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野、2. こばやし歯科クリニック、3. 衣笠あかり訪問歯科クリニック、4. 医療法人社団立靖会ラビット歯科)

【緒言・目的】
 訪問診療においては、介護者が行う医療行為の支援も重要である。在宅での摂食嚥下障害患者に対して直接訓練を行うにあたり、咽頭吸引処置を要することがある。しかし、同処置は手技が困難であるため介護者による実施が困難である場合が少なくない。本症例では咽頭吸引処置を補助する口腔内装置を作成し、嚥下障害患者の介護者による直接訓練が可能となった症例を報告する。
【症例および経過】
 75歳、女性。20XX年、前頭側頭型認知症により経口摂取困難となり胃瘻を造設し、お楽しみ程度でゼリーやヨーグルトを1日に1個摂取していた。しかし20XX年+1年後に新型コロナウイルス感染により嚥下機能が低下した。湿性嗄声を認め、経口摂取禁止となった。その後介護者である夫から経口摂取を再開させたいとの訴えがあり、主治医から嚥下機能評価の依頼があった。嚥下内視鏡検査を実施したところ、唾液や咽頭残留に対し吸引処置が可能であれば、ゼリーによるお楽しみ程度の経口摂取が可能な状態であった。しかし介護者は技術的に咽頭吸引処置が難しく、過去にも看護師より同処置の指導を受けたが技術の習得が困難であった。そこで、介護者が簡単かつ確実に咽頭吸引処置が可能となるマウスピースを作成し上顎に装着した。同マウスピースには吸引カテーテルが挿入可能な溝を付与しており、同溝から吸引カテーテルを一定量挿入するだけで吸引部が梨状窩に達することを嚥下内視鏡で確認した。介護者は本装置を用いることで、咽頭残留物の吸引が可能となり直接訓練が開始された。
【考察】
 本装置の使用により咽頭の吸引処置と経口摂取が可能となり、患者や介護者の希望を叶える支援に繋がった。介護者にとって簡単で確実に咽頭吸引処置ができる本装置は介護負担の軽減にも寄与する可能性がある。本報告の発表については患者家族から同意を得ている。
 (COI開示なし)
(倫理審査対象外)