The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 全身管理・全身疾患

全身管理・全身疾患(質疑応答)

Sat. Jun 29, 2024 10:40 AM - 11:40 AM ポスター会場 (大ホールC)

[P-21] 化学療法中の重度歯周病患者への口腔衛生指導により生活の質の向上につながった一症例

○大庭 志保1、谷 明日香1、奥 菜央理1、塚本 葉子1,2、吉良 恵美1、山添 淳一1、柏﨑 晴彦1 (1. 九州大学病院 高齢者歯科・全身管理歯科、2. 九州大学病院医療技術部歯科衛生室)

【緒言・目的】
横行結腸癌に対して化学療法中にC反応性蛋白(以下、CRP)上昇、経口摂取不良のため治療継続困難な状態となり、自己の口腔への関心も低かった患者に対し、全顎的な歯科治療および口腔衛生指導を行い、口腔衛生状態と経口摂取の改善ができた症例について報告する。
【症例および経過】
57歳男性。当院内科主治医からの紹介で原因不明のCRP上昇の原因特定と摂食不良改善を目的に当科初診となった。既往歴は横行結腸癌・肝転移、2型糖尿病、慢性腎臓病、脂質異常症、パニック障害、うつ病、不安障害、不眠症、吃音症である。初診時、全顎的に歯肉の退縮、発赤、腫脹、歯の挺出を認め、咬合支持は喪失、口腔乾燥も認めた。歯周検査の結果、PPD4mm以上60%、BOP80%、21┬12└6の動揺、複数歯の周囲から排膿を認めた。口腔衛生状態も不良でPCR92%であった。また、咀嚼困難で経口液体栄養補助食品のみでエネルギーを摂取していることから頻回の下痢を起こし、体力が低下するため化学療法の継続が困難となる可能性があった。うつ病の影響もあり、当初歯科治療に対して消極的だったが、食生活指導や味覚検査の実施で患者の理解を深めることで、抜歯や義歯製作も受け入れ始めた。なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。吃音による構音・発語障害が原因で治療に消極的にならないよう、患者のテンポに合わせて会話を進行した。受診を重ねるごとに、患者の自発的な質問が増え、同時に検査結果はPPD4mm以上42%、BOP69%、PCR71%で歯肉腫脹・出血・排膿が減少傾向にあり、口腔内状態の改善を認めている。少しずつ常食の経口摂取の回数も増え生活の質が改善し、時折笑顔を見せるなど表情の変化も見られるようになった。現在、化学療法も順調に継続できており空手の練習再開を内科主治医に相談するなど豊かな生活が始められる兆しが見えている。
【考察】
化学療法中の患者においては、患者の全身状態と口腔内衛生環境の向上への理解が重要である。本症例では、歯科衛生士が吃音に対して理解を深め、会話のペース配分に配慮したことでモチベーションの維持向上・セルフケアの定着に繋がり、結果、生活習慣の行動変容にもつながったと考える。今後も、全身疾患を考慮した口腔内管理を継続できるように努めたい。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)(954/1000文字)