一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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連携医療・地域医療-1(質疑応答)

2024年6月29日(土) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-26] 地域歯科医師会要介護高齢者診療所における抜歯症例の検討

○間宮 秀樹1、堀本 進1、小林 利也1、小野 洋一1、秋元 宏恵1、菊地 幸信1、杉山 美帆1、高橋 恭子1、似鳥 純子1、日吉 美保1、若尾 美知代1 (1. 公益社団法人 藤沢市歯科医師会)

【目的】
 抜歯は患者にはストレスが大きい処置であり,局所麻酔,施行時の侵襲,術後の出血と痛みが問題となる.患者の年齢や基礎疾患,抗血栓薬による出血傾向や骨吸収抑制薬による顎骨壊死など,常用薬の種類によりさらにリスクは高くなる.今回,我々は藤沢市歯科医師会南部要介護高齢者診療部門で施行された抜歯症例について検討した.
【方法】
 令和5年1月から12月までの1年間に受診した全症例のうち,抜歯が行われた,あるいは抜歯を他施設に依頼した患者を抽出し,年齢,基礎疾患,内服薬,抜歯部位,抜歯回数,使用局所麻酔薬の種類と量,術中偶発症,術後偶発症について,また他院紹介患者についてはその理由について,診療記録および麻酔記録をもとに後ろ向きに調査した.
【結果と考察】
 抜歯症例は24名46症例であった.年齢は62~93歳,平均81.6歳であった.基礎疾患は高血圧症が12例ともっとも多く,認知症が7例,不整脈と骨粗鬆症が各5例と続いた.抗血栓薬内服患者は12例,骨吸収抑制薬使用患者は3例であった.単回抜歯の患者が14名と多かったが,3回以上行われた患者も6名みられた.使用局所麻酔薬はアドレナリン添加リドカイン製剤が35例ともっとも多く,他にはプロピトカイン製剤5例,メピバカイン製剤1例であった.抜歯時の全身的偶発症として頻脈,血圧上昇がみられたが,休憩により安定し,予定抜歯が遂行されていた.14例で抜歯窩に酸化セルロースが塡入されていた.抜歯後の局所的偶発症として,深部静脈血栓のために2剤併用の抗血栓療法を受けていた患者で,抜歯後出血のために再掻爬,止血処置が複数回施行されていた.骨吸収抑制薬使用患者と糖尿病患者には術前抗菌薬投与が行われ,抜歯後感染はなかった.複数回の失神既往の患者が1名,3次医療機関に紹介されていた.
 今回,適切な症例選択,抗菌薬前投与,術中のモニタリングと止血処置,術後の経過観察と対応により予定抜歯が遂行されていたことから,2次医療機関においても抜歯は安全に施行できると考えられた.しかし,抗血栓療法中の患者で術後出血を認めた症例もあり,術後のフォローアップと偶発症に対する準備は必須と考えられた.
(COI開示:なし)(藤沢市歯科医師会倫理委員会承認番号 2023-005)