The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 連携医療・地域医療-1

連携医療・地域医療-1(質疑応答)

Sat. Jun 29, 2024 10:40 AM - 11:40 AM ポスター会場 (大ホールC)

[P-27] 嚥下障害診療から始まる地域医療連携

松宮 春彦1、○樋口 祐子1 (1. もぐもぐクリニック 嚥下リハビリテーション栄養・歯科)

【目的】
 嚥下機能は高齢になるに従い一般的に低下していく傾向にある。高齢者における嚥下障害は低栄養や誤嚥性肺炎などの重要なリスク因子となり, 地域包括ケアシステムの推進を阻害するものと予想されるが, 現状として嚥下機能の維持向上に積極的に取り組む医療機関は全国的にまだ少ない。その大きな要因として嚥下障害に関わる職種が多岐にわたるため, 人材の確保や医療連携が難しいことが挙げられる。もぐもぐクリニックは嚥下障害への対応に特化し, さらに地域医療連携を重視した診療所を開設することで, 地域完結型の医療提供体制の構築に参画する事を目的として2018年4月より実験的運営を行なっている。開業から約6年が経過した現状を報告する。
【方法】
 高齢者における嚥下障害の診療では嚥下機能に加えて栄養状態の把握が重要となるが, その診療アルゴリズムにリハ栄養ケアプロセスの概念を融合できているものは少ない。地域医療連携において緊急を要する診療依頼を受ける際には, 迅速な診断・情報共有・リハ栄養介入と嚥下治療の開始が要となる。そのため, 独自の診療アルゴリズムを作成し, 運用している。また, 中等度以上の嚥下障害を有する受診者の多くでは一般的に日常生活動作の低下に伴い指示が通りにくいことや, 治療に対するモチベーションが低下しやすい傾向も踏まえた上で治療計画を立てる必要がある。そのため, 嚥下に関わる末梢神経をターゲットとした電気刺激療法と磁気刺激療法に摂食訓練(直接訓練)を組み合わせた嚥下治療を一般歯科診療と同時に行なっている。 本研究は規定に則った倫理的配慮下で実施した。
【結果と考察】
 2023年12月迄の診療実績(算定回数)は, 嚥下内視鏡検査 2,049回, 嚥下造影検査 714回, 摂食機能療法 30,007回, また医療連携の一指標となる診療情報提供料(Ⅰ)は1,800回であった。嚥下障害に対応した診療所とは, 嚥下治療を行っているだけでなく多職種によるチーム医療を積極的に推進している医療機関であることを意味している。我々はこの6年間で外来診療と訪問診療の両方をほぼ同レベルで充実させ, さらに地域医療連携室を稼働させることにより, 地域包括ケアシステム推進の一翼を担える診療所に成長した。このような診療形態は今後地域社会において益々重要な役割を果たすことが考えられる。
(COI開示なし)
(倫理審査対象外)