[P-72] 高齢者施設入所者の誤嚥性肺炎発症時の口腔内環境と嚥下機能の関係性の調査
【目的】
口腔ケアによる誤嚥性肺炎発症への予防効果については今日では広く認識されている。当院は、歯科衛生士が常勤配置された高齢者施設を関連施設に持ち、介護職員に対して口腔ケア指導を行っている。しかしながら、誤嚥性肺炎を完全に予防することは困難であり、年間でも一定数の入院は認められる。また、誤嚥性肺炎を発症し入院に至る原因は口腔衛生状態の悪化と嚥下機能低下のどちらが主原因であったのか明らかにできていない。当院は、入院中に耳鼻咽喉科に嚥下評価を依頼する連携体制が備わっている。そこで本研究では、当院関連施設で誤嚥性肺炎により入院した入居者の口腔内環境と嚥下機能評価の結果を解析することにより、口腔衛生管理が一定水準保たれた環境下での誤嚥性肺炎発症の要因を解明することを目的とした。
【方法】
2021年7月から2023年11月の期間中に、当院関連高齢者施設 (介護老人保健施設および特別養護老人ホーム)の入居者で誤嚥性肺炎により入院となり嚥下評価を行った50症例 (平均年齢89±8.7歳)の診療記録を閲覧し情報収集した。口腔内環境は、歯科衛生士が嚥下評価前後に記録したOHAT(ORAL HEALTH ASSESSMENT TOOL)を参照しデータ抽出を行った。嚥下評価については当院耳鼻咽喉科で実施した嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査を参照し、解釈については担当医に確認し認識の齟齬がないようにした。
【結果と考察】
OHATの合計値は、嚥下機能評価前(平均値:5.3±3.46)と嚥下機能評価後(平均値:4.6±3.20)で2群間で有意差は認めなかった。また、①口唇、②舌、③歯肉・粘膜、④唾液、⑤残存歯、⑥義歯、⑦口腔清掃、⑧歯痛の各項目でも有意差は認めなかった。よって、誤嚥性肺炎で入院となった患者は口腔健康状態が悪化していたのではなく、一定レベルの健康状態は担保できていたことが示唆された。その一方で多くの症例で、嚥下機能評価の結果により口腔期と咽頭期における機能低下が疑われた。したがって、当院の関連施設では誤嚥性肺炎を発症する入居者でも一定水準の口腔健康状態が保たれており、発症の要因としては嚥下機能の低下が強く疑われ、咽頭のクリアランスや嚥下反射の惹起遅延など複数の要因か関与している可能性が高いものと思われた。
(COI 開示:なし)
(福岡学園倫理審査委員会許可番号 第548号)
口腔ケアによる誤嚥性肺炎発症への予防効果については今日では広く認識されている。当院は、歯科衛生士が常勤配置された高齢者施設を関連施設に持ち、介護職員に対して口腔ケア指導を行っている。しかしながら、誤嚥性肺炎を完全に予防することは困難であり、年間でも一定数の入院は認められる。また、誤嚥性肺炎を発症し入院に至る原因は口腔衛生状態の悪化と嚥下機能低下のどちらが主原因であったのか明らかにできていない。当院は、入院中に耳鼻咽喉科に嚥下評価を依頼する連携体制が備わっている。そこで本研究では、当院関連施設で誤嚥性肺炎により入院した入居者の口腔内環境と嚥下機能評価の結果を解析することにより、口腔衛生管理が一定水準保たれた環境下での誤嚥性肺炎発症の要因を解明することを目的とした。
【方法】
2021年7月から2023年11月の期間中に、当院関連高齢者施設 (介護老人保健施設および特別養護老人ホーム)の入居者で誤嚥性肺炎により入院となり嚥下評価を行った50症例 (平均年齢89±8.7歳)の診療記録を閲覧し情報収集した。口腔内環境は、歯科衛生士が嚥下評価前後に記録したOHAT(ORAL HEALTH ASSESSMENT TOOL)を参照しデータ抽出を行った。嚥下評価については当院耳鼻咽喉科で実施した嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査を参照し、解釈については担当医に確認し認識の齟齬がないようにした。
【結果と考察】
OHATの合計値は、嚥下機能評価前(平均値:5.3±3.46)と嚥下機能評価後(平均値:4.6±3.20)で2群間で有意差は認めなかった。また、①口唇、②舌、③歯肉・粘膜、④唾液、⑤残存歯、⑥義歯、⑦口腔清掃、⑧歯痛の各項目でも有意差は認めなかった。よって、誤嚥性肺炎で入院となった患者は口腔健康状態が悪化していたのではなく、一定レベルの健康状態は担保できていたことが示唆された。その一方で多くの症例で、嚥下機能評価の結果により口腔期と咽頭期における機能低下が疑われた。したがって、当院の関連施設では誤嚥性肺炎を発症する入居者でも一定水準の口腔健康状態が保たれており、発症の要因としては嚥下機能の低下が強く疑われ、咽頭のクリアランスや嚥下反射の惹起遅延など複数の要因か関与している可能性が高いものと思われた。
(COI 開示:なし)
(福岡学園倫理審査委員会許可番号 第548号)