一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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連携医療・地域医療-4(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-91] 唾液持続吸引マウスピースを使用したALS患者に対し口腔衛生管理を行った1症例

○伊藤 ことみ1,2、宮本 佳宏2、原 豪志4、大塚 晴奈2,3、浅野 小羽2 (1. 今池歯科クリニック、2. 医療法人一栄会結デンタル、3. 石原歯科医院、4. 衣笠あかり訪問歯科クリニック)

【緒言・目的】
 進行したALS患者の口腔症状の一つとして,流涎があげられる。病状の進行に伴い,家族の介護負担が大きくなることにより在宅療養の継続が難しくなることがある。歯科医師が唾液持続吸引マウスピースを作製し,歯科衛生士が口腔衛生管理を行ったことにより,家族の介護負担を軽減し,現在も誤嚥性肺炎を発症することなく在宅療養を続けている例を報告する。
【症例及び経過】
 71歳,男性。厚生労働省によるALSの重症度分類5。歯科衛生士が口腔衛生管理での訪問の際に,主たる介護者である妻から流涎が多く,24時間体制で唾液の吸引を行うのは十分な睡眠時間が確保できず,在宅療養を続けるのは難しいとの訴えがあった。患者本人の流涎による苦痛の訴えがあり,その対応をする家族の介護負担が増えることにより在宅療養生活の維持が困難になると判断した。そのため,歯科衛生士がICTを使用し流涎の様子の動画を多職種に情報共有した。以前金魚ポンプを使用した持続吸引器を使用したものの,チューブを咬断しうまく機能しなかったことから,歯科医師が唾液持続吸引マウスピースの適応ありと診断し歯科技工士に作製を依頼した。マウスピースを作製したことにより,夜間に妻が起きて吸引器で唾液を吸引する必要がなくなった。歯科衛生士による徹底した口腔衛生管理と,唾液持続吸引マウスピースの使用により唾液誤嚥を防ぐことで誤嚥性肺炎を発症することなく在宅療養を続けている。
 なお,本症例の発表について患者及び家族から文書による同意を得ている。
【考察】
 唾液持続吸引マウスピースを装着したことにより,患者自身から唾液貯留による不快感がなくなったという意思表示があった。また,流涎がなくなり座位姿勢を取れるようになることなど,QOLの向上に繋がったと考えられる。また,頻回な唾液吸引の必要がなくなったことや,ベッドシーツの唾液汚染を防ぐことができ,介護者である妻から介護負担が軽減されたとの声が挙がった。Key personである妻の健康状態と体力を考慮し,在宅療養を継続することに寄与することができたと考えられる。
(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)