一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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連携医療・地域医療-4(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-93] 在宅でICTを使用した多職種による介入により栄養状態の改善とADLの改善が見られた1症例

○浅野 小羽1、宮本 佳宏1、大塚 晴奈2,1、伊藤 ことみ3,1、近藤 有希1 (1. 結デンタル、2. 石原歯科医院、3. 今池歯科クリニック)

【緒言・目的】
在宅医療の現場では,多職種との連携を取る方法には苦慮することがある。当地区では「びーよんネット」と呼ばれる尾北医師会が主導しているICTネットワークがあり,地域で活動する多職種が抄録投稿時点で635名参加している。「びーよんネット」を用いることで歯科衛生士が全身状態の情報を訪問中の多職種から常時得ることができ,また歯科衛生士が訪問した際の口腔状態の評価と指導内容を関わる全ての多職種及び患者家族へ同時に情報共有することができる。今回,ICTを用いた多職種連携を図る中で,栄養状態の改善とADLの改善がみられた症例を経験したため報告する。
【症例および経過】
94歳,女性。元々のADLは自立していたが総合病院歯科口腔外科で右下顎骨辺縁切除術を施行後,入院中にCOVID-19に感染し,全身的な廃用が進んだことで寝たきり状態となった。口腔内疼痛が強く覚醒状態も悪いため経口摂取が不十分で衰弱が進み,家族の希望で退院をして在宅療養となったものの,発熱が繰り返されたことから,在宅主治医より癌末期として訪問看護師と言語聴覚士への口腔清掃指示があった。より専門的な口腔状態の評価と口腔清掃状態の改善目的で歯科の介入となり,歯科衛生士による多職種及び患者家族へのICTを用いた口腔清掃方法の指導を実施することで,口腔衛生状態は改善し,経口摂取が進み,退院時35.3kgであった体重が4ヵ月後には39.9kgまで増量した。さらに,離床が進むようになり,排泄も摘便からトイレでの排泄ができる全身状態になったため在宅主治医より8ヵ月後に癌末期病名は取り下げられた。なお,本発表について患者本人及び家族から文書による同意を得ている。
【考察】
在宅療養を行う患家での多職種連携は各々が患家に情報共有ノートや多種にわたるICTを用いて連携を取られているのが実態である。情報共有ノートは患家に居るタイミングでしか情報を得ることができなく,ICTは共通のネットワークを利用登録している者のみが利用可能となるため,汎用性が低いことが課題と考えられる。本症例は,「びーよんネット」により,関わる全ての多職種及び患者家族と情報共有することができた。歯科衛生士が各専門職種の評価する全身状態を適切に把握しながら,口腔衛生管理をすることはより良い在宅療養環境が整えられる可能性があると考えられた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)