一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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課題口演1
地域包括ケアシステム

2024年6月29日(土) 08:50 〜 10:10 第3会場 (中ホール)

[課題1-5] 脳卒中回復期における歯科介入の効果 -多機関共同研究-

○日高 玲奈1、松尾 浩一郎1、岩佐 康行2、大野 友久3、金森 大輔4、貴島 真佐子5、寺中 智6、古屋 純一7、関本 愉8,9 (1. 東京医科歯科大学大学院 地域・福祉口腔機能管理学分野、2. 原土井病院歯科/摂食・栄養支援部、3. 浜松市リハビリテーション病院歯科、4. 藤田医科大学医学部 七栗記念病院歯科、5. わかくさ竜間リハビリテーション病院歯科、6. 足利赤十字病院 リハビリテーション科、7. 昭和大学大学院 口腔機能管理学分野、8. 東京医科歯科大学大学院 老化制御学講座 高齢者歯科学分野、9. 医療法人宝生会 PL病院 歯科)

【目的】
 脳卒中患者はその回復過程において,口腔内状況の悪化や摂食嚥下障害などに陥るリスクが高いため継続的な口腔管理が求められる。本研究では,多機関共同研究(Stroke Oral-health Rehabilitation and Management, STORM Study)にて脳卒中回復期における歯科介入の効果を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 5施設の回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者228名(男性121名,平均年齢73.0±12.0歳)を対象に,入院時と退院時のFunctional Independence Measures(FIM)と経口摂取状況,および歯数,義歯の有無と適合状態,Oral Health Assessment Tool(OHAT)を評価した。また,入院中の歯科介入内容と回数を記録した。各項目について,入院時から退院時までの変化を統計学的に分析した。
【結果と考察】
 在院期間は中央値(四分位)で90(58-138)日,入院後の初回評価日までは7(3-10)日であった。歯科の介入は,210名(93%)に対して7(3.5-12)回なされており,その内訳は,歯周治療が130名(62%)と一番多く,義歯調整・修理62名,義歯新製48名,抜歯が45名等であった。初回評価で,義歯の使用者88名中55名(63%)が適合不良の状態であったが,最終評価では,使用者が98名と増加し,適合不良の者は7名(7%)まで低下していた。OHATスコアも各項目有意に改善しており,スコア0の割合が,義歯では69%から94%,残存歯では53%から73%まで改善していた。経口摂取状況は,常食形態が初回103名(45%)から最終172名(75%)まで増加し,FIM合計点が64.4±27.0点から94.6±26.2点へと改善していた。入院期間の比較的長い回復期において適切な口腔評価と積極的な歯科介入を実施することで口腔環境が改善することが明らかになった。脳卒中急性期では,全身状態の悪化や救命のための集約的な治療により,口腔環境が悪化していることが多い。脳卒中回復期では,口腔衛生管理だけではなく,積極的な歯科治療も含めた口腔機能管理を行うことで,咀嚼嚥下機能や経口摂取のさらなる改善が見込まれることが示唆された。
(COI 開示:なし)
(東京医科歯科大学 倫理審査委員会承認番号 D2021-055)