一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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課題口演2
口腔機能低下症

2024年6月29日(土) 10:20 〜 11:40 第3会場 (中ホール)

[課題2-2] 舌抵抗訓練における舌圧方向が筋活動分布と舌圧向上効果に及ぼす影響:骨格筋機能的磁気共鳴画像による検討

○佐藤 全弘1、山口 哲史1、服部 佳功1 (1. 東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野)

【目的】
 舌抵抗訓練によって舌圧は向上するが、異なる舌圧方向による訓練が筋活動や訓練の効果に及ぼす影響は不明である。本研究では、挙上もしくは側方の舌抵抗訓練を行い、その前後に各訓練タスクにおける舌内部の局所筋活動分布と舌圧を測定することで、訓練時の舌圧方向が筋活動分布や舌圧向上効果に及ぼす影響を解析した。
【方法】
 対象者20名(男性13名、平均27.8歳)を10名ずつ挙上訓練群と側方訓練群に振り分けた。対象者は1日10回3セット、週3日の舌抵抗訓練を4週間行った。訓練期間の前後には、訓練と同じタスクによる骨格筋機能的磁気共鳴画像(muscle functional MRI:mfMRI)の撮像と挙上・側方舌圧の測定を行った。mfMRIの解析では、標準的形態を持つ対象者のMR画像をテンプレートとして全対象者のT2強調画像を空間的に標準化し、統計マッピングによって舌内部の有意な筋活動領域を抽出した。舌圧については訓練前後の舌圧変化率を算出し、訓練時の舌圧方向と測定時の舌圧方向による影響を2元配置分散分析によって解析した。
【結果と考察】
 訓練前のmfMRIでは有意な筋活動領域が検出されなかったが、訓練後では挙上タスクで舌背部とオトガイ舌骨筋部、側方タスクで舌背部と舌根部において、全対象者に共通の有意な筋活動が認められた(FDR補正p<0.05)。これは筋活動部位が訓練によって上記の領域に収束したことを示唆している。また両タスクの筋活動分布を比較すると、挙上タスクではオトガイ舌骨筋付近、側方タスクでは舌深部の内舌筋付近の筋活動が強い傾向が認められた(非有意)。舌圧変化率に対して訓練時と測定時の舌圧方向は有意な交互作用を示し、側方訓練群では側方舌圧変化率が挙上舌圧変化率に比べ有意に高かったが(p=0.02)、挙上訓練群では両者に有意差は無かった(p=0.44)。本結果より、舌圧方向の違いによって舌内部の筋活動領域は異なり、訓練による舌圧向上効果にも舌圧方向による特異性があることが示された。挙上訓練はオトガイ舌骨筋が強く活動するため、嚥下機能の改善により効果的かもしれない。今後、嚥下や咀嚼時の舌内筋活動部位を調査することで、舌内部の機能分布と適切な訓練方法について、新たな知見が得られることが期待される。
(COI開示:なし)
(東北大学大学院歯学研究科研究倫理委員会承認番号 25396)