The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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課題口演2
口腔機能低下症

Sat. Jun 29, 2024 10:20 AM - 11:40 AM 第3会場 (中ホール)

[課題2-5] 歯科外来通院中の高齢者における認知機能低下、口腔機能低下および味覚障害との関連

○藤原 晶子1、水谷 慎介1,2、福本 陽香1、山添 淳一1、柏﨑 晴彦1 (1. 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学・全身管理歯科学分野、2. 九州大学大学院歯学研究院附属OBT研究センター)

【目的】
 認知症と味覚障害との関連についての研究は、嗅覚障害と比較して非常に少ない。基本4味質を用いた全口腔法による味覚閾値と認知機能との関連はないという報告があるが、一定した見解は得られていない。さらに、口腔機能との関連を考慮した研究結果はほとんどない。本研究では、歯科外来通院中の高齢者を対象に、全口腔法による味覚検査、口腔機能検査および認知機能検査を行い、認知機能と味覚障害の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 対象は65歳から85歳の高齢者30名であった。全口腔法のうち2段階の濃度を使用し、5味(甘味、塩味、旨味、酸味、苦味)について、味覚障害の有無を判定した。現在歯数、義歯の使用状況および口腔機能精密検査7項目を用いた。MoCA-Jにおける25点以下を認知機能低下群とし、正常群との2群比較にはMann-Whitney testおよびχ二乗検定を用いた。
【結果と考察】
 対象者の年齢および残存歯数の中央値(四分位範囲)は、71.0(69.8-74.3)歳および23.5(16.8-26.0)本であった。認知機能低下群は10名(33%)であった。味覚障害者の割合は、甘味40%、塩味35%、旨味57%、酸味30%、苦味20%であった。旨味における味覚障害者の割合は、認知機能正常群40%および低下群90%であり、有意な差が認められた(P=0.009)。他の4味では同様の関連性は認められなかった。また、認知機能低下群において、オーラルディアドコキネシス(ODK)/ta/および/ka/が有意に低下していた (P=0.044およびP=0.022)が、他の口腔機能評価において、2群間に統計学的に有意な差は認められなかった。一方、口腔機能と味覚障害の関連において、旨味の味覚障害者では、ODK/ka/の機能が低下していた(P=0.039)。 以上より、認知機能低下者では旨味の認識が低下している者が多く、さらにODK/ta/および/ka/の低下が認められた。近年、アルツハイマー型認知症患者およびMCI患者は、旨味を認識していない人が多いといった味覚機能低下との関連性が報告されている。認知機能低下の早期発見のため、歯科医院における口腔機能評価のみならず、味覚(旨味)の評価を行うことの重要性が示唆された。
(COI 開示:なし)
(九州大学倫理専門委員会承認番号21029-01)