[SY10-2] 「人生の最終段階における歯科医療・ケアのプロセス」を学修するための実習
【略歴】
2005年 北海道医療大学歯学部歯学科卒業
2006年 北海道医療大学歯学部任期制助手(歯科補綴学第一講座)
2010年 北海道医療大学大学院歯学研究科博士課程修了
2010年 北海道医療大学歯学部 口腔機能修復・再建学系咬合再建補綴学分野 助教
2013年 北海道医療大学歯学部 口腔機能修復・再建学系咬合再建補綴学分野 講師
2018年 北海道医療大学歯学部 総合教育学系 臨床教育管理運営分野 講師
2024年 北海道医療大学歯学部 総合教育学系 臨床教育管理運営分野 准教授
(2018年~ 兼任 口腔機能修復・再建学系咬合再建補綴学分野)
2005年 北海道医療大学歯学部歯学科卒業
2006年 北海道医療大学歯学部任期制助手(歯科補綴学第一講座)
2010年 北海道医療大学大学院歯学研究科博士課程修了
2010年 北海道医療大学歯学部 口腔機能修復・再建学系咬合再建補綴学分野 助教
2013年 北海道医療大学歯学部 口腔機能修復・再建学系咬合再建補綴学分野 講師
2018年 北海道医療大学歯学部 総合教育学系 臨床教育管理運営分野 講師
2024年 北海道医療大学歯学部 総合教育学系 臨床教育管理運営分野 准教授
(2018年~ 兼任 口腔機能修復・再建学系咬合再建補綴学分野)
【抄録(Abstract)】
人は誰でも、いつでも、命に関わる病気やケガをする可能性がある。命の危険が迫った状況に陥ると、約7割の方は医療やケアなどを自分で決めたり、要望を人に伝えたりすることが困難になると言われている。そのため、前もって周囲の信頼する人たちと話し合い、共有するための「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」が重要になる。この医療やケアの中には歯科医療も含まれるが、歯学教育ではACPに関する学修機会は少なく、それを体験できるとすれば歯科訪問診療が挙げられる。歯科訪問診療において、本人の意思決定や家族による本人の意思推定が明確である場合は、口腔状態や口腔機能に応じた治療計画の立案に対して同意が得られやすいことから治療は比較的スムーズである。一方、本人の意思が確認できない場合は、口腔状態や口腔機能を考慮して推定意思を尊重した上で最善の方針を決めることになる。また、家族による本人の意思を推定できない場合は、キーパーソンである家族や他職種との話し合いの場を設けて治療方針を検討することになる。実際に、ご家族から「入れ歯を作ってほしい」と依頼があって訪問したものの、意思疎通が困難な状況から要望に応じた歯科医療を提供できないことがある。そして、患者本人が本当に入れ歯を必要と考えているのかも判断することができない。たとえ、義歯装着ができて家族の要望が叶ったとしても、数日後に誤嚥性肺炎により本人が亡くなった場合、適切で妥当な医療・ケアであったのかはわからなくなる。このことから、歯科医師と歯科衛生士は、患者の人生の最終段階における歯科医療・ケアのプロセスについて、卒前教育の場面で共に学修し共通認識を得ておくことが重要である。
今回、臨床実習を実施している本学歯学部5年生と歯学部附属歯科衛生士専門学校3年生に対して、人生の最終段階における歯科医療・ケアのプロセスについて学修するためのシミュレーション実習を行った。各学生は、ある患者が歯科医院通院時から歯科訪問診療に至るまでの過程の動画を視聴し、それぞれが歯科医師役と歯科衛生士役となって、その患者の口腔内を模したマネキンに対して口腔内検査を実施した。本人の意思決定が困難である場合を想定し、Jonsenらの4分割法を用いて歯科医学的な問題点やQOLなど臨床倫理についてまとめた。そして、患者本人や家族等にとって最善な歯科医療の治療方針について各グループで検討し総合討論を行った。
本講演では、本実習での取り組み内容について紹介するとともに、今後の老年歯科医学教育に必要とされるコンピテンスについて議論したいと考える。
人は誰でも、いつでも、命に関わる病気やケガをする可能性がある。命の危険が迫った状況に陥ると、約7割の方は医療やケアなどを自分で決めたり、要望を人に伝えたりすることが困難になると言われている。そのため、前もって周囲の信頼する人たちと話し合い、共有するための「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」が重要になる。この医療やケアの中には歯科医療も含まれるが、歯学教育ではACPに関する学修機会は少なく、それを体験できるとすれば歯科訪問診療が挙げられる。歯科訪問診療において、本人の意思決定や家族による本人の意思推定が明確である場合は、口腔状態や口腔機能に応じた治療計画の立案に対して同意が得られやすいことから治療は比較的スムーズである。一方、本人の意思が確認できない場合は、口腔状態や口腔機能を考慮して推定意思を尊重した上で最善の方針を決めることになる。また、家族による本人の意思を推定できない場合は、キーパーソンである家族や他職種との話し合いの場を設けて治療方針を検討することになる。実際に、ご家族から「入れ歯を作ってほしい」と依頼があって訪問したものの、意思疎通が困難な状況から要望に応じた歯科医療を提供できないことがある。そして、患者本人が本当に入れ歯を必要と考えているのかも判断することができない。たとえ、義歯装着ができて家族の要望が叶ったとしても、数日後に誤嚥性肺炎により本人が亡くなった場合、適切で妥当な医療・ケアであったのかはわからなくなる。このことから、歯科医師と歯科衛生士は、患者の人生の最終段階における歯科医療・ケアのプロセスについて、卒前教育の場面で共に学修し共通認識を得ておくことが重要である。
今回、臨床実習を実施している本学歯学部5年生と歯学部附属歯科衛生士専門学校3年生に対して、人生の最終段階における歯科医療・ケアのプロセスについて学修するためのシミュレーション実習を行った。各学生は、ある患者が歯科医院通院時から歯科訪問診療に至るまでの過程の動画を視聴し、それぞれが歯科医師役と歯科衛生士役となって、その患者の口腔内を模したマネキンに対して口腔内検査を実施した。本人の意思決定が困難である場合を想定し、Jonsenらの4分割法を用いて歯科医学的な問題点やQOLなど臨床倫理についてまとめた。そして、患者本人や家族等にとって最善な歯科医療の治療方針について各グループで検討し総合討論を行った。
本講演では、本実習での取り組み内容について紹介するとともに、今後の老年歯科医学教育に必要とされるコンピテンスについて議論したいと考える。